福島県葛尾村、旧避難区域に観光牧場がオープン


帰還住民「復興の目玉に」と開園を決意、ヤギと触れ合いも

福島県葛尾村、旧避難区域に観光牧場がオープン

牧場のオープンを迎え、うれしそうに子ヤギを抱える鎌田毅さん=5月29日、福島県葛尾村(時事)

福島県葛尾村、旧避難区域に観光牧場がオープン

牧場の触れ合い広場でヤギに餌をやる子ども(左)=5月29日、福島県葛尾村(時事)

 東京電力福島第1原発事故で一時全村避難となった福島県葛尾村で、ヤギと触れ合える観光牧場がオープンした。村に帰還した男性が「復興の目玉に」と開園を決意。開園初日、家族連れらでにぎわいを見せた。原発事故後、民間企業による観光施設が村内にできるのは初めて。

 観光牧場「かつらおヤギ広場 がらがらどん」の運営会社社長を務める鎌田毅さん(78)は葛尾村の出身。村で「鎌田牧場」を立ち上げ養豚業を営んでいたが、原発事故で廃業と避難を余儀なくされ、村の大部分の避難指示が解除された2016年に帰還した。

 行政区長として復興活動に取り組む中、栃木県那須塩原市でヤギ牧場を経営していた男性と出会い、「何か目玉を作って葛尾を活性化させたい」と意気投合。17年に牧場の運営会社を設立し、県の補助金なども活用して20年5月の開園を目指し準備してきたが、コロナ禍で延期となっていた。

 この1年間、感染防止策を講じ、ヤギの餌やりや乳搾り、ヤギの生乳を使ったせっけん作りなどの体験メニューのほか、併設するカフェの準備を進め、5月29日にオープンにこぎ着けた。

 開園初日、福島県田村市から両親と参加した北嶋さやちゃん(5)は「初めてヤギを触って楽しかった。また来たい」と笑顔で話した。村で養鶏場を営む高橋憲司さん(34)は、「復興の中オープンしてうれしい。人が来るきっかけになるような場所になれば良い」とほほ笑んだ。

 鎌田さんは「葛尾村の自然を生かし、みんなに愛される牧場にしたい」と話した。