福島県葛尾村、旧避難区域に観光牧場がオープン
帰還住民「復興の目玉に」と開園を決意、ヤギと触れ合いも
東京電力福島第1原発事故で一時全村避難となった福島県葛尾村で、ヤギと触れ合える観光牧場がオープンした。村に帰還した男性が「復興の目玉に」と開園を決意。開園初日、家族連れらでにぎわいを見せた。原発事故後、民間企業による観光施設が村内にできるのは初めて。
観光牧場「かつらおヤギ広場 がらがらどん」の運営会社社長を務める鎌田毅さん(78)は葛尾村の出身。村で「鎌田牧場」を立ち上げ養豚業を営んでいたが、原発事故で廃業と避難を余儀なくされ、村の大部分の避難指示が解除された2016年に帰還した。
行政区長として復興活動に取り組む中、栃木県那須塩原市でヤギ牧場を経営していた男性と出会い、「何か目玉を作って葛尾を活性化させたい」と意気投合。17年に牧場の運営会社を設立し、県の補助金なども活用して20年5月の開園を目指し準備してきたが、コロナ禍で延期となっていた。
この1年間、感染防止策を講じ、ヤギの餌やりや乳搾り、ヤギの生乳を使ったせっけん作りなどの体験メニューのほか、併設するカフェの準備を進め、5月29日にオープンにこぎ着けた。
開園初日、福島県田村市から両親と参加した北嶋さやちゃん(5)は「初めてヤギを触って楽しかった。また来たい」と笑顔で話した。村で養鶏場を営む高橋憲司さん(34)は、「復興の中オープンしてうれしい。人が来るきっかけになるような場所になれば良い」とほほ笑んだ。
鎌田さんは「葛尾村の自然を生かし、みんなに愛される牧場にしたい」と話した。