「一流プロほど困難」、専門家が理解を呼び掛ける


大坂なおみ選手が棄権、うつ症状の「後出し」批判に戒め

「一流プロほど困難」、専門家が理解を呼び掛ける

全豪オープンテニス決勝で、ヘッドホンを着けてコートに現れた大坂なおみ選手=2月20日(時事)

 うつ症状を公表し、全仏オープンを棄権した女子テニスの大坂なおみ選手。当初は突然の会見拒否が波紋を呼んだが、世界ランク2位の現役選手が精神面の問題を告白したことは、より大きな衝撃をもって受け止められた。メンタルヘルスの専門家らは「精神失調への偏見はいまだ強く、スポンサーを持つトップ選手ほど症状を明かすことは難しい」として、選手が抱える精神的重圧への理解を呼び掛けた。

 多くのアスリートを精神面から支えてきた日本メンタルトレーナー協会理事の浮世満理子さんは「自分がメンタルヘルスに課題を持っていると告白するのは、普通の会社員でも非常に勇気がいること」と指摘。一部では、大坂選手が初めからうつ症状を告白していればここまで騒動は大きくならなかったとの意見もあるが、「後出しとの批判こそ、傍観者の後出しじゃんけんだ」と戒めた。

 精神疾患の当事者や家族でつくる「全国精神保健福祉会連合会」の小幡恭弘事務局長も「うつ症状に対する偏見は強く、周囲に言わない人は多い」と理解を示す。「大坂選手は会見を受ければ精神状態が悪化すると感じ、やむなく回避したのではないか。予想外に批判を受けたことで、事情を明かさざるを得なくなったのだと思う」と思いやった。

 日本スポーツ精神医学会理事で、精神科医の堀正士・早稲田大教授は「トップ選手になるほどスポンサーをはじめとしたさまざまな利害関係が生まれ、完璧な人物像を求められる」と指摘。「選手は負傷したら休養するものだが、精神失調は目に見えず周囲の理解を得にくい。選手も一般の人と同じように不安やうつに悩まされると知ってほしい」と語った。