大相撲夏場所(東京・両国国技館)は、大関…


 大相撲夏場所(東京・両国国技館)は、大関照ノ富士(29)の連覇、4度目にして大関としては初めての優勝である。ここまでの道のりで培った心の逞(たくま)しさが、平常心を支え賜杯獲得へと導いた。中身の濃い栄冠だと称(たた)えたい。

 23歳でスピード出世した大関からけがと病気で序二段まで陥落した後の今場所は、21場所ぶりに戻ってきた大関。初日から10連勝の土俵は大関の中でも格の違う強さだった。躓(つまず)いたのは11日目の妙義龍戦での髷(まげ)をつかんでの反則負けだった。

 それでも13日目まで2差の独走で、残る2日で並ばれることは予想しづらかった。が、14日目の遠藤戦は土俵際で投げの打ち合いとなり、微妙な一番は物言いの末に行司差し違えで黒星に。千秋楽は本割りで貴景勝の突き落としを食い、優勝決定戦に持ち込まれた。

 照ノ富士の胸中にイヤな予感が過(よぎ)ったに違いない。過去3回の決定戦は全敗。それも昨年11月場所の決定戦では、この貴景勝に阻まれたからだ。

 だが、反則負けや微妙な一番での敗北があっても、決定戦にもつれ込んでも、クサらず動揺を抑えた。平常心を保ってこられたのは「そういう相撲を取った自分が悪い」という師匠(伊勢ケ浜親方=元横綱旭富士)の言葉を胸に刻んできたからだ。

 決定戦では右からかち上げて逆に押し込み、押し返そうとする難敵をはたき込んだ。7月は五輪も楽しみだが、照ノ富士が綱取りに挑む名古屋場所も目を離せない。