茨城県一家殺傷事件、容疑者逮捕から1週間


物証乏しく難しい捜査に、移動手段や動機はなお不明

茨城県一家殺傷事件、容疑者逮捕から1週間

一家が襲われ、夫妻が殺害された民家の周辺=7日午後、茨城県境町(時事)

 茨城県境町の民家で2019年9月、家族4人が殺傷された事件で、殺人容疑で無職岡庭由征容疑者(26)が逮捕されてから14日で1週間。犯人に直接結び付く凶器や遺留品は現場から発見されておらず、県警は押収物の分析など状況証拠を積み上げて逮捕に踏み切った。物証が乏しい中での難しい捜査が続く。

 ▽勾留半年、逮捕決断

 殺害された小林光則さん当時(48)夫婦は顔や胸などに多数の刃物傷があった。県警は当初、怨恨(えんこん)による犯行の可能性が高いとみて捜査したが、一家にトラブルなどは確認されなかった。

 捜査対象を被害者と面識のない不審人物らに拡大する中で岡庭容疑者が浮上し、県警などは昨年11月、自宅に大量の硫黄を貯蔵した容疑で逮捕。今年2月には警察手帳の記章を偽造した疑いで再逮捕した。これらの事件での勾留は約半年間に及び、公判開始後に保釈される可能性が高いことから、県警は殺人容疑での逮捕を決断したとみられる。

 岡庭容疑者の認否は明らかにされていない。取り調べには応じているとされるが、事件に関する供述が得られても、公判で長期勾留の影響などが問題視される可能性は残る。

 ▽現場検索も、残る疑問

 現場は周囲に民家のない木々に囲まれた場所にある。岡庭容疑者の自宅からは約30キロ離れ、土地勘はなかったとみられる。県警の捜査で、同容疑者がインターネットで現場周辺の情報を検索していたことが判明。押収物から付近の画像も見つかった。

 同容疑者は車の免許がなく、県警は現場までスポーツタイプの自転車で行ったとみている。しかし、事件当時は雨が降っており、自転車での長距離移動には不自然さも残る。面識がなく遠方にある被害者宅を襲撃先とした理由も不明だ。

 事件では催涙スプレーが使われたが、捜査の結果、同容疑者が事件前にネットで催涙スプレーやナイフを購入していたことが判明している。過去の家宅捜索では自宅から多数の刃物も押収されたが、付着物などの鑑定で被害者のDNA型は検出されなかったとみられる。

 岡庭容疑者は過去に起こした刑事事件の裁判で、広汎性発達障害の影響を指摘されたことがある。刑事責任能力を調べるため鑑定留置される可能性が高い。