緊急事態宣言が延長、神経をとがらせ営業再開
遊園地や劇場、賑わう百貨店も、居酒屋店主は険しい表情
東京、大阪、京都、兵庫の4都府県で31日までの延長期間に入った緊急事態宣言。12日、条件付きで営業を再開した都内の遊園地や劇場は感染対策に神経をとがらせ、新たに宣言の対象となった愛知、福岡両県では、酒を提供できなくなった居酒屋の店主が「採算が取れない」と表情を曇らせるなどした。
5000人以下などの条件付きで観客の受け入れが可能となった新国立劇場(東京都渋谷区)。1人で観劇に来た千葉県松戸市の主婦(47)は「上演されることになってよかった。静かに見て帰る」と語った。横浜市の無職高浜由喜枝さん(70)は、美術館や博物館には休業要請が続くことに触れ、「演劇もだまって見るのだから同じ。線引きがおかしい」と首をかしげた。
東京・浅草の遊園地「花やしき」は18日ぶりに営業を再開。酒の販売や持ち込みを禁止し、「マスクを鼻の上まで上げて」と来場者に呼び掛けるなど、感染対策に神経をとがらせていた。2歳の男児を連れた墨田区の会社員男性(31)は2カ月ぶりの来園といい、「やっと来ることができた」と笑顔を見せた。
新たに対象に加わった愛知県。県内の感染者数が過去最多を記録する中、JR名古屋駅(名古屋市)に直結する大型百貨店は高齢者らでにぎわっていた。総菜などを求めて訪れた同市の主婦相川孝子さん(86)は「百貨店での買い物は楽しい。ここでしか買えないものもある」と宣言下の営業を歓迎。自宅修繕のための建材を買いに来た同市の無職北村史朗さん(79)は、3度目の宣言にうんざりした様子で「(この1年間で)感染者数は減っていない」と吐き捨てるように言った。
酒類・カラオケを提供する飲食店に休業要請が出た福岡県。最大の歓楽街・中洲では、多くの店が立ち並ぶ通りににぎわいはなく、辺りは暗いままだった。
「酒、飲めますか?」。午後6時ごろ、若い男性が居酒屋ののれんをくぐったが、男性店長(34)が「お酒はやっていない」と返事をするとすぐに出て行った。初めての酒無し営業となったこの日、同店で食事をした客はほとんどなく、店長は「これでは採算は取れない」と厳しい表情を浮かべた。