危機はらむ二股外交

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 韓国は現在、米国と中国の狭間で二股路線をとって米中等距離外交を展開している。中国を味方にして北朝鮮への圧力(以夷制夷=夷を以て夷を制する)を通して南北統一の基盤を造成し、南北統一の主導権を確保するのが狙いだろう。9月3日、朴槿恵大統領が中国の抗日戦争勝利70周年記念式典に出席した主な目的もここにあるはずだ。

 これがうまく進んで、将来、韓国が南北平和統一を成し遂げれば、朴大統領は偉大な国家経営戦略家として歴史に記録されるだろうが、冒険的な試みがうまくいかない場合は、国家的な危機を招く恐れをはらんでいる。

 朴大統領の中国の記念式典出席をめぐって、賛否両論が激しく対立している。否定的な側面から見れば、対日戦勝国は中国ではなく米国であり、中国は外に敵を作って内部結束を固めるため、わざと抗日戦勝を大きく宣伝している。

 朝鮮戦争の時、韓国軍は15万人が中国軍の攻撃を受け戦死した事実があり、中国は韓国主導の北進統一を挫折させた仇敵だ。さらに、中国は北朝鮮の軍事挑発が発生する度に北寄りの立場をとった前例がある。特に1961年締結の中朝友好条約は戦時、中国軍の自動参戦を明記している。中国は韓国を取り込んで、日米両国と離間させる(以夷制夷)狙いではないかとの疑心を捨て切れない。8月20日、南北危機が高潮した時、中国軍が中朝国境に戦車を集結させた目的も疑問だ。

 一方、肯定的な側面から見れば北朝鮮の核問題解決と南北統一の基盤造成、さらに北朝鮮の軍事挑発の抑止に中国の積極的な役割が期待できる。また今年10月、韓国で開催される見通しの日中韓3国首脳会談では膠着(こうちゃく)した日韓関係の和解が期待され、日韓の和解が日米韓安保体制を強化するきっかけになることも期待できる。今回、朴大統領の抗日戦勝式典出席の損益計算書を見れば、短期的に最も黒字につながるのは経済上昇効果だろう。

 朴大統領の戦勝式典出席は、固定観念を捨てて外交の弾力性と柔軟性を生かした選択肢だろう。だが韓国も中国もお互いに以夷制夷戦略なら、互いが限界にぶつかる可能性も否定できない。従って安保は韓米日協力体制、経済は日中韓協力関係に基づく「政経分離」が韓国の望ましい外交路線だ。韓国は米韓同盟関係という心強いバックグラウンドがあるからこそ中国が無視できない存在であるのだ。

(拓殖大学客員研究員・元韓国国防省北韓分析官)