再・補欠選、与党圧勝の背景

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 7月30日、“ミニ総選挙”と言われた国会議員の再・補欠選挙で第一野党・新政治民主連合(新民連)は全国15選挙区で4議席しか取れず、惨敗した。

 6月4日実施の統一地方選挙では、17市道知事選で野党・新民連と与党・セヌリ党が9対8とほぼ引き分けだった。注目のソウル市長選でも野党候補の朴元淳氏が再選され、与党側の鄭夢準氏(現代重工業の大株主)が惨敗した。

 従って、今回の再・補欠選も引き分けとの見方が多かったが、ふたを開けてみると予想外に与党が圧勝した。韓国では今、その原因や背景が話題の焦点になっている。

 韓国はよく“不思議な国”と風刺されるが、今回の選挙も不思議な結果だとも言える。旅客船「セウォル号」の沈没事故と首相内定者2名の就任辞退など相次ぐ失策にも関わらず、国民は与党を支持して勝利を与えたからだ。しかし、それは「国民の賢明かつ成熟した政治感覚の表れ」と評価すべきだ。特に、伝統的な野党の票田である全羅南道で、朴槿恵大統領の広報首席秘書官を務めた李貞鉉氏が当選する異変が起こった。住民が与野党を問わず地域発展のために力を発揮できる人物を選ぶという、政治感覚の変化が垣間見られる。

 今回の選挙の特徴は野党の大物政治家が皆落選し、与党の若い新人候補が多数当選したことだ。また、今回の選挙の結果を受けて野党・新民連の共同代表、安哲秀氏(IT企業代表、教授など歴任)と金ハンギル氏が辞任した。そのため、次期大統領候補として人気を誇っていた安氏の政治生命は終わりを迎えたとの見方が強い。

 野党が惨敗した主な原因は「セウォル号」事故の責任が全て現政権にあるとして反政府扇動を主導するなど、与党の足を引っ張るだけの野党側に国民世論が背を向けたためだ。もとより「セウォル号」事故の遠因は過去、金大中、盧武鉉の親北左派政権で巨額の不正融資を受けた兪炳彦(自殺)元オーナーのずさんな経営と当局の慢性的な監督不行き届きが原因だ。

 さらに、与党圧勝の背景には朴大統領が「セウォル号」事故について涙の謝罪をしたことと、7月から老人に対する基礎年金の支給が開始されたことが国民に幅広く評価されたことがある。

 因みに朴大統領は左派陣営から「お姫様・貴族」などと批判されたが、両親が暗殺され結婚もせず政治活動中にテロに遭うなどの苦しい人生の逆境を乗り越えたヒロインと評価されたことも選挙勝利の背景だろう。

 2017年の大統領選挙で与野党には「国民の賢明かつ成熟した政治感覚」による厳しい審判が待ち構えていることを覚悟すべきだ。

(拓殖大学客員研究員・元韓国国防省北韓分析官)