セウォル号の惨事招いた“韓国病”

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 まず「セウォル号」沈没事故の犠牲者と御遺族に心よりお悔やみ申し上げたい。

 沈没の原因は適正積載量の3倍を超える積荷に加えて船底の積載タンクのバラスト水を減らした結果、船体の復元力が大きく弱まったことだと言われている。

 韓国では6月に全国の自治体で首長選挙がある。今回の事故では遺族に働きかけて反政府運動を煽(あお)る動きまで現れている。朴槿恵大統領の支持率が急落する中、事故は現政権の重荷になっているが、事故の責任を現政府の監督不行き届きにだけ負わすことはできない。昔から韓国社会に広がる構造的かつ総体的な放漫さの現れである。大惨事を招いた“韓国病”にメスを入れて根本から治療しない限り、第2、第3の惨事が再発する恐れがある。

 今回の惨事は自然災害ではない。人災である。運航会社の杜撰(ずさん)なリスク管理と行政府の危機管理能力がきちんと整っていないということの証である。特に、政府当局と傘下団体及び運航会社が絡み合う国全体の総体的な放漫さが赤裸々に露呈したといえる。

 韓国は造船能力が受注ベースで世界1位といわれる。ところが、セウォル号は日本の造船所で作られた中古船を買い取って無理に客室を増築した。さらに運航寿命がわずかな中古船の運航延長を許した当局も責任を取らざるを得ない。運航会社と行政当局、さらにこれと関連した“政治屋”が絡んだ不正疑惑も指摘されている。

 発展途上国の優等生である韓国号を「後進国型不正」と「慢性的な放漫さ」が足を引っ張っている。安全点検や運航ルールを守らない“適当主義”も大惨事の招いた原因と指摘されている。さらに、日本が捜索援助の意思を表明したにもかかわらず、これを拒んだことも救助が遅れた要因の一つだろう。人命救助は敵と味方を問わず直ちに実行しなければならない最優先事項だ。しかし、友好国の捜索援助を受け入れなかったことは「小貪大失」(細かい体面にこだわると大きなものを失う)の失策だったと考えざるを得ない。

 今回、セウォル号の沈没事件とその後の対応について、国際社会では韓国の「後進性」が指摘され「3流国家」扱いまでされている。国際社会の優等生である「韓国号の沈没」とも言われている。

 今回の事件を教訓に、韓国は総体的な放漫さを根本的に検討して先進国に生まれ変わるきっかけにすべきだ。韓国社会全体に蔓延(まんえん)するがんを取り除く覚悟で大手術を断行しなければならない重要な時期に直面している。朴大統領の大胆な政治決断と政治力に国民的な期待が高まっている。

(拓殖大学客員研究員・元韓国国防省北韓分析官)