国益優先の決断に学べ

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 朴槿恵大統領の父、朴正熙元大統領は「親日派・売国奴」「独裁者」という非難と反対デモの真っ只中で1965年、韓日国交正常化を強行した。反日より国益を優先した決断だった。日本からの資金8億㌦(無償3億、有償2億、借款3億)は韓国経済成長の牽引(けんいん)車となった。

 当時、豊かだったフィリピンは日本の戦後の賠償金を観光ホテルや享楽産業建設に投資した。だが、貧しかった韓国は麦飯と藁葺(わらぶ)きの家で生活しながらも、高速道路、港湾などインフラ整備に集中投資した。同時に、鉄鋼、造船、自動車など重化学工業の建設に汗を流した。

 さらに、鉱夫・看護婦の西ドイツ派遣、ベトナム派兵、中東への建設事業進出、国内の企業戦士たちの血と汗の努力が土台となり、今日、韓国は高度成長の花を咲かせたわけだ。

 親日派、売国奴と非難を浴びた朴元大統領が決断しなかったならば、今日の豊かな韓国はあり得なかったはずだ。

 寒くて空腹だった貧困時代、民主化運動を抑えながら貧困追放・成長政策を強行した「朴正熙開発独裁」は後進国の経済成長モデルとなった。今や開発途上国は韓国を手本とするベンチマーキングに努めている。

 指導者が国益優先の政策を決意するかどうかによって国運が変わるという証しである。

 国の針路を舵(かじ)取るべき指導者は大衆心理に揺れる国民の顔色を見ない勇気が必要だ。大衆人気に迎合するポピュリズムの「政治屋」は党利党略だけを追求する。しかし「政治家」は、大衆の非難を浴びても所信を崩さず国益を優先し国家の将来を考える。

 国家経営の責任者には大衆の人気より国益を優先するリーダシップが必須である。そういう面から朴正熙元大統領の決断とリーダシップは国内外から評価されている。朴正熙元大統領の独裁を非難する人々も国益優先の決断と経済成長の結果には頭を下げる。

 韓国は南北が対峙(たいじ)する環境の中でも、韓日国交による経済成長と米韓同盟による安全保障を両立させてきた。それだからこそ、なおいっそう朴大統領の洞察力が求められる。遠い強国と同盟して隣の強国を牽制する「遠交近攻」と「勢力均衡」は永遠なる歴史の必然だ。これに逆らうと危機が訪れるのが歴史の教訓である。

(拓殖大学客員研究員・元韓国国防省北韓分析官)