北朝鮮レアアースの経済価値いかに

埋蔵量世界2位?含有量は不明

 スマートフォンなど通信機器の部品や液晶パネル、航空機エンジンなどの材料として幅広く使用され、中国の対日輸出規制で大騒ぎにもなったレアアース(希土類)が北朝鮮にかなりの量埋蔵されていることが分かりつつあるが、果たしてその経済的価値はどのくらいなのだろうか。
(ソウル・上田勇実)

外貨稼ぎへ韓国に働き掛けも

500 今秋、北朝鮮の地下資源をテーマに専門家や関係者を招いた討論会がソウル市内で行われた。ある資料発表で、北朝鮮が中国からの投資誘致に向け作成した資料に「北朝鮮のレアアース埋蔵量は10億トン」と記されていることが紹介された。

 また今年8月、韓国鉱物資源公社の元幹部が韓国有力紙に寄稿し、「北朝鮮が主張する10億トンのレアアース埋蔵量のうち産業的意味を持つ量は約4800万トン」と指摘した。これは中国の8900万トンに次いで世界2位で、ロシア(2100万トン)、米国(1400万トン)の両大国を凌ぐ。

 韓国政府機関の南北交流協力支援協会によると、北朝鮮のレアアースは咸鏡北道の茂山鉱山をはじめ全国10鉱山に埋蔵されていると考えられている(地図参照)。ただ、埋蔵量が仮に世界2位であったとしても「含有量は未知であるため経済価値がどのくらいかは判断しづらい」(同協会関係者)のが実際のところだ。

 北朝鮮は一昨年11月、開城工業団地を訪問した韓国側関係者に対し、レアアース採掘に関する協議を打診してきたことがある。韓国紙によると、北朝鮮の民族経済協力連合会の関係者がレアアースのサンプル四つを手渡し、受け取った韓国鉱物資源公社がその経済性を分析。公社は自社が中国に投資したレアアース工場2カ所で北朝鮮産レアアースを精製することを検討したという。

 その直後、金正日総書記の死去で南北間の協議は途絶えたが、北朝鮮は南北関係が改善され次第、再び韓国にレアアース採掘を働き掛ける可能性は十分ある。外貨稼ぎにはもってこいの鉱物だからだ。

 北朝鮮は1990年代初めまで国の支援で鉱山開発を積極的に進めたが、共産主義国家の崩壊で主な輸出先を失ったほか、国家財政も悪化、その後の国際社会による経済制裁で外資誘致にも失敗し、低迷したままだ。

 2005年に北朝鮮は鉱山開発振興計画を立て、それ以降、中国企業が北朝鮮の各種鉱山の採掘権を獲得したり、巨額の投資を行い、多少は持ち直しているが、大幅な増加までには至っていない。電力不足や設備・資材の老朽化で鉱山の稼働率は30%にも達していないという見方もある。

 石炭や鉄鉱石、亜鉛など従来の主要鉱物に比べ、単価が高いレアアースに北朝鮮が関心を示すのは極めて当然といえる。

 西側諸国にとって、度重なる核実験やミサイル発射など安保リスクを抱えたまま北朝鮮の鉱山開発に乗り出すのは困難だが、中国による「北朝鮮経済の植民地化」を憂い、北朝鮮とは切っても切れない「特殊な関係」にある韓国が、今後、南北関係が改善した時点でレアアース採掘の要請に応じるか興味深いところだ。