東アサミット 地域が連携して中国抑えよ
東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国や日米中露などの18カ国が集う東アジアサミット(EAS)がバンコク近郊で開かれた。
中国は国際ルールを無視し、ASEANの一部加盟国と領有権を争う南シナ海で軍事拠点化を進めている。日本は米国や地域諸国と連携し、中国の海洋進出を抑えることが求められる。
対中牽制の意見相次ぐ
サミットでは、南シナ海情勢を中心に協議が行われ、中国を牽制する意見が相次いだ。南シナ海では、ベトナムの排他的経済水域(EEZ)内で中国の海洋調査船が3カ月以上にわたり断続的に活動するなど、緊張が高まっている。
オランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年7月、中国が南シナ海をほぼ囲むように設定する独自の境界線「九段線」について、域内の資源に「歴史的権利を主張する法的根拠はない」との判断を下した。中国が判決を無視して南シナ海の軍事拠点化を進めていることは「法の支配」という普遍的価値観に反するもので断じて容認できない。
一方、中国はASEANとの首脳会議で、ASEAN域内の交通網整備と中国の広域経済圏構想「一帯一路」を一体化させることで合意した。カンボジアやラオスなどでは既に、中国が鉄道や道路の建設を手掛けている。中国の関与が一段と深まれば、過剰投資による「債務のわな」が懸念される。
トランプ米大統領が3年連続で、東アサミットなどASEAN関連の首脳会議への出席を見送ったことは残念だった。米国の存在は中国を牽制(けんせい)する上で極めて重要だからだ。
トランプ氏が欠席したのは1年後の大統領選への対応を優先したためだが、中国はASEANを取り込もうと攻勢に出た。中国の李克強首相は、南シナ海での紛争を防止する「行動規範」策定に関して「(域外国の)干渉を排除し、協議のハンドルをわれわれが握らなければならない」とASEAN諸国に訴えた。米国を念頭に置いた発言だが、中国主導で行動規範を定めた場合、中国に有利な内容となりかねず、警戒が必要だ。
東アサミットの議長声明は南シナ海問題について、草案段階では「重大な懸念」と表現を強めていたが、中国の強い反発で「いくつかの懸念に留意」と前年の表現を引き継いだ。ここにもトランプ氏欠席の影響が表れたと言えよう。
ただ、米国はこの地域に関心がないわけではない。米軍は南シナ海で中国の海洋権益主張を否定する「航行の自由作戦」を繰り返しているほか、今年9月にはASEANと初の合同軍事演習を実施した。中国に対してはASEANも一枚岩ではないが、米国は普遍的価値観である航行の自由を守り抜くべきだ。
地域の安定に向け対処を
日米が進める「自由で開かれたインド太平洋」構想には、安定的な成長のために航行の自由や法の支配を浸透させる狙いもある。安倍晋三首相も「日中関係改善」にこだわらず、地域の安定に向け、南シナ海での自衛隊と米軍との演習やASEANとの防衛協力などで中国に対処する必要がある。