防災の日 気候変動で急務の災害対策


 9月1日は「防災の日」。近年、わが国は大きな台風や豪雨に次々と見舞われ、新たな規模の自然災害の脅威に直面している。大雨の基準となる1時間50~100㍉、1日200㍉を超える降雨は珍しくなくなった。地球温暖化による気候変動などの影響を十分に考慮した災害対策や生命を守るための避難体制の新たな検討が必要だ。

列島各地に被害及ぶ

 昨年7月、西日本を中心とする広い地域を記録的豪雨が襲い、200人以上の死者を出した。今年は犠牲者こそ少ないが、九州地方を中心とした相次ぐ豪雨で、家屋浸水などの被害をこうむった。

 積乱雲が発達し、強力な雨雲が居座る線状降水帯が、大雨の直接的な原因だ。この線状降水帯の発生や、大雨が増加する傾向の背景には、地球温暖化による異常気象がある。長期的な気温の上昇に伴い、大気中の水蒸気が増え、大雨の頻度も徐々に増えている。

 また、列島に突然発生する集中豪雨は、インドネシアなど東南アジアの森林面積の減少の影響が大きいとみられる。地球温暖化による気候変動や気象現象の変化を踏まえた防災対策を講じることが急務だ。

 さらに、昨今の豪雨による被害は、九州地方だけでなく、中・四国、関西、北陸、北海道など、列島のどこでも生じる可能性があり、その対策が要る。西日本豪雨では、生活圏の拡大による堤防の強度の相対的な弱化、住民の安全を十分に確保できないダム利用、森林の未整備による保水機能の低下などが明らかになった。他の地方も同様に留意すべき点だ。

 東京、大阪、名古屋の三大都市に広がる海抜ゼロメートル地帯での被害も懸念される。首都圏では、利根川の堤防が決壊すると最大230万人が被害を受け、主に都内を流れる荒川が決壊した場合、最大3500人の死者が出るという政府調査機関の報告もある。

 また東京は雨量が増えると排水が追いつかず、道路に水があふれてしまい、広範囲に延び続ける地下街の被害規模はとても予測がつかない。大規模な交通マヒも発生する。

 一方、国は避難のための情報として、今年の雨のシーズンから、5段階の「警戒レベル」の運用を始め、気象庁の発表に新たな情報が加わった。しかし「情報の種類は多いが、何がどれくらい危ない状況を示すのか、分からない」という住民の声は少なくない。

 これは、その情報が雨量や風速などに基づくものがほとんどのため、住民はこうした状況にどのように対処すればいいか把握できず、次の行動に移りにくいという理由が挙げられる。国民の意見を広くくんで、より効果的な避難情報を提供するよう求めたい。

「複合災害」にも警戒を

 近年生じた自然災害は、豪雨のほか、地震、火山の噴火、津波・高潮などが挙げられ、さらにそれらが重なる複合災害の発生もあり得る。

 また、竜巻などの気象現象が起きることもまれではなくなった。これらの災害に対する備えも忘れてはならない。