豚コレラ、ワクチン使用もやむを得ない


 岐阜、愛知両県に発生が集中していた豚コレラが、7月に入り三重、福井両県に広がった。

 ウイルスの媒介役とされる野生イノシシの感染事例はさらに広域に及び、新たな発生県がいつ出てもおかしくない状況だ。

三重、福井両県にも拡大

 豚コレラは豚やイノシシがかかる家畜伝染病で、感染すると高熱や食欲低下などの症状を引き起こす。感染力が強く、致死率が高い。

 昨年9月に国内では26年ぶりに岐阜市の養豚場で発生して以来、岐阜県の豚の殺処分頭数は約6万2000頭、今年2月から発生が相次ぐ愛知県では6万頭以上に上るという。甚大な被害であり、国には発生農場への十分な補償が求められる。

 もっとも、2月に愛知県の養豚場から子豚が出荷された大阪、滋賀、長野、愛知、岐阜の5府県で感染が確認されたケースを除けば、これまで発生は岐阜、愛知両県のみだった。ところが7月、三重、福井両県の養豚場でも確認されるなど、感染が拡大している。このほか、長野県や富山県では豚コレラに感染していた野生イノシシの死骸が発見されており、さらなる広がりも懸念される。

 農林水産省は、発生県の豚に対するワクチン接種の是非について検討を始めた。ワクチンを使用すると、国際ルール上「非清浄国」とみなされ、豚肉の輸出が困難になるため、これまで農水省は慎重姿勢を崩していなかった。

 だが、これ以上の感染拡大を許すわけにはいかない。ワクチン使用もやむを得ないだろう。農水省は対象地域の豚の移動を制限し、豚肉が域外で販売されないようにした上で、未使用エリアを「清浄国」として認めるよう国際獣疫事務局(OIE)に求めていく方針だ。

 ただ、ワクチンを接種しても流通管理が不十分だとみなされれば、輸入停止を決める国が相次ぐことも考えられる。発生各県はトレーサビリティー(生産流通履歴)の把握など厳格な管理を徹底する必要がある。

 農水省の疫学調査チームが公表した中間報告によれば、国内で豚ウイルスに感染した豚から検出されたウイルスは全て中国で流行している型と一致した。発生のきっかけとなったのが、アジア地域から違法に持ち込まれたとみられるウイルス入りの肉製品だ。

 不適切に廃棄された肉製品を野生イノシシが食べて感染したことにより、蔓延(まんえん)した可能性が高いとしている。空港での水際対策を強化することも感染拡大防止に欠かせない。

 中国などでは、豚コレラとは別の家畜伝染病であるアフリカ豚コレラも流行している。アフリカ豚コレラは有効なワクチンや治療法がなく、致死率はほぼ100%。これまでのところ、日本で発生が確認されたことはないが、アフリカ豚コレラの遺伝子が検出された肉製品の持ち込みが相次いでいる。水際対策での国際連携も求められる。

風評被害を防止せよ

 豚コレラは人にはうつらず、感染した豚の肉を食べても人体に影響はない。

 風評被害の防止に向けた情報発信も必要だ。