原爆の日 日米同盟の核抑止力強化を


 広島は6日、長崎は9日に「原爆の日」を迎える。今回は74回目の鎮魂の日だ。犠牲者はそれぞれ25万人、15万人に達すると言われる。深く静かに祈りを捧(ささ)げるとともに「核兵器と平和との関係」について考えたい。

 中国や北朝鮮の脅威

 わが国は核兵器による惨禍を体験した唯一の国だけに「恐るべき残酷な兵器」として核兵器への嫌悪感が強く、廃絶への思いもひときわ強い。当然のことである。

 しかし冷静に考えてみると、核兵器は数多くある兵器の中の一つにすぎない。悪いのは核兵器そのものではなく、誰がどのような意図で保有しているかが問題なのだ。換言すれば、核兵器を持つ国の性格次第で「脅威」にもなり、平和維持のための「抑止力」ともなることを忘れてはならない。

 東アジアでは、多数の核弾頭を保有する中国が国内の基地に核ミサイルを配備し、日本の主要都市に照準を合わせているという。日本を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」約200発を実戦配備する北朝鮮も、既に核兵器の小型化・弾頭化を実現している恐れがある。

 それでは、なぜ中国や北朝鮮はわが国に核攻撃をしないのか。その理由は、核攻撃をすれば、日本の同盟国である米国によるより強烈な核報復攻撃を受けるという恐怖心である。これを抑止力という。

 次に考えねばならないのは、核廃絶で平和をもたらせるかどうかだ。核廃絶が実現すれば、確かに核戦争はなくなるに違いない。しかし国境問題その他、戦争の原因がある限り、人々はたとえ石を武器にしてでも戦うだろう。そして核兵器をこの世からなくせば、人口が多く強力な地上戦力を持つ国、例えば中国のような国の軍事的立場が圧倒的に強くなるだろう。

 原爆の日には、広島と長崎でさまざまな「平和の行事」が行われる。原爆を投下された日本国民がひときわ核兵器を憎み、その廃絶を望むのはごく自然な感情だとしても、同時に核抑止力こそ核戦争阻止の最も有効な手段であることを忘れてはならない。

 「平和願望」だけでは平和は来ない。その点、わが国が米国の「核の傘」によって守られていながら、国連などで核廃絶を主張する矛盾が国内外で指摘されている。

 日本国民に必要なのは、核兵器の功罪についての冷静な思考だ。実現可能性の低い核軍縮を叫ぶよりも、米国の核抑止力強化に協力する方が、より現実的な平和維持の戦略であることは間違いない。

 平和維持へ同盟深化を

 1987年に米国と旧ソ連が締結した中距離核戦力(INF)全廃条約が今月、失効した。米国が破棄を決定した背景には、ロシアへの不信感だけでなく、INF条約に縛られない中国が地上発射型の中距離ミサイルなどの開発を進め、米国や同盟国の安全保障を脅かしていることへの懸念もある。

 米国は、地上配備型の中距離ミサイルの開発を本格化させる方針を示した。米国の核の傘の下にある日本は、平和維持に向け同盟深化に努めるべきだ。