竹島領空侵犯、日韓分断狙う中露の挑発だ


 ロシア軍のA50早期警戒管制機1機が島根県の竹島(韓国名・独島)の領空を侵犯し、領有権を主張する韓国の空軍戦闘機が緊急発進して360発の警告射撃を行った。その直前には中国の爆撃機2機が近くの日本の防空識別圏内に入り、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した。

 中露の相次ぐ軍事挑発には、竹島をめぐる日韓間の領土問題を改めて争点化させ、関係悪化が続く日韓をさらに分断させようという思惑もありそうだ。要注意である。

関係悪化に便乗する

 防衛省によると、中国爆撃機2機は東シナ海から日本海にかけて飛行した後、ロシア爆撃機2機がこれに合流し、その近くにいたロシアのA50が竹島の領空を2度にわたり計約7分間侵犯した。韓国戦闘機はロシア軍機が無線による呼び掛けに応答しなかったため、機体前方に向けて機銃掃射したという。

ロシア国防省は日本海で中露両国空軍による初の合同長距離パトロールを実施したと発表した。領空侵犯は機器の誤作動が原因だったとも説明したようだが、立証されてはいない。中露軍機の動きは誤作動によるものとは考えにくく、意図的だった可能性が高い。

領空侵犯などに対し日韓が軍事的にどう対抗してくるのかテストした側面もあるだろうが、それ以上に政治的な狙いがあったのではないか。

ロシア軍機の領空侵犯と韓国軍の対応は日本の立場からすれば到底受け入れられるものではない。今回は竹島を不法占拠している韓国が対抗措置を取ったが、本来は日本が行うもので、政府はロシアと韓国に外交ルートで抗議した。

ところが、韓国はこれを一蹴した。日本が口出しすることではないという立場なのだろう。

 結果的に竹島領有権をめぐる日韓の立場の違いがまたもやクローズアップされた。元徴用工訴訟の大法院(最高裁)判決や半導体材料の対韓輸出規制などで日韓関係は改善の糸口すら見いだせずにいる。韓国側からは日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直し発言まで飛び出していた。領空侵犯はこうした関係悪化に便乗したかのような動きだ。

 中露の挑発はボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が日韓両国を歴訪し、関係改善へ仲介役を果たすのではないかとの見方が出ていた最中に起きた。北東アジアの安全保障をめぐる日米韓3カ国の連携を崩したい中露が、これに冷や水を浴びせようとしたとしても不思議はない。

 来月に予定されている米韓の合同軍事演習を中露が牽制(けんせい)したという見方もある。中国の海洋覇権主義などに対抗するインド太平洋戦略への参加について最終的な態度を明確にしていない韓国を揺さぶる狙いもあるとみられる。

文政権の安保観に疑問

 文在寅政権は中露の挑発を正面から非難することはせず、その一方で日本の竹島領有権主張を強く批判した。日韓関係悪化の影響もあろうが、安保上の敵味方をはき違えているのではないか。文政権の安保観に改めて疑問を呈さざるを得ない。