はやぶさ2の快挙、また新たな歴史をつくった


 探査機「はやぶさ2」がまた新たな歴史をつくった――小惑星「りゅうぐう」へ2回目の着陸を行い、弾丸発射による地下物質採取にも成功した。世界初の快挙である。

 はやぶさ2は今年末まで観測を続け、2020年末、試料の入ったカプセルを地球に届ける。どんな「太陽系の歴史」が分かってくるか楽しみである。

世界初の地下物質採取

 はやぶさ2が着陸したのは、人工クレーターの中心から約20㍍離れた半径3・5㍍の領域。4月に人工クレーターを作った際に噴出した地下物質が堆積している所である。

 はやぶさ2は上空30㍍まで接近後、5月に投下した目印をカメラで捉えて自律制御でさらに降下し、ついに地表へ着陸。機体下部にある試料採取装置から弾丸を発射し、舞い上がった物質の採取に成功した。

 採取した試料は、まさに「太陽系の歴史のかけら」(津田雄一はやぶさ2プロジェクトマネジャー)。りゅうぐうのようなC型小惑星は、生命に欠かせない、約46億年前の太陽系誕生当時の水や有機物を含んでいると考えられているからだ。

 はやぶさ2は地表と地下からと複数の試料を採取。分析担当の専門家は、宇宙風化によって地表でどのような有機物が合成あるいは分解されるのか、また地下からは初期太陽系で形成された有機物の組成など重要な情報が得られると期待を寄せる。

 さまざまなトラブルに見舞われた初代に比べ、順調にミッションをこなし、「太陽系の歴史を手に入れる」快挙を成し遂げたはやぶさ2。

 だが、その裏には大きな葛藤もあったという。既に着陸・試料採取(タッチダウン)に一度成功しており、さらに危険を冒して2回目を行うべきかである。

 タッチダウンは一歩間違えれば小惑星に衝突するなどして、地球への帰還が困難になるリスクがつきまとう。そうなれば、1回目のタッチダウンで得た貴重な試料をも失ってしまう。

 しかも、1回目のタッチダウンの際、細かい砂などが巻き上がり、自律制御で降下するはやぶさ2の「目」となるカメラに付着して、受光感度が低下するなど必ずしも万全な状態ではなかったからだ。

 このため、プロジェクトチームはこれまでの観測データから作成した着陸目標地点の3次元マップを使い、一つ一つ岩の高さを推定。また感度が低下したカメラなどは、事前の低高度観測で性能を再確認するなどした。そして、さまざまな条件を変えた降下シミュレーションを10万回行い、失敗が一度もないところまで突き詰めるという地道な作業を繰り返したのである。

 「冷静な評価を行い、技術は十分あると判断した。技術がある以上、挑戦しない選択肢はない」――リスクを慎重に見極めて決断を下し、会見でこう言い切った津田プロジェクトマネジャーと、その決断に見事に応えたプロジェクトチームに心から敬意を表したい。

引き続き慎重な運用を

 プロジェクトは一番大きな山を越えた。年末までの観測と20年末の帰還へ、引き続き慎重な運用を進めていってほしい。