「強い経済」復活に原発再稼働が不可欠だ


 安倍晋三首相は今年の年頭所感で「『強い経済』を取り戻すべく、引き続き全力で取り組む」と強調した。「強い経済」の復活のためには、経済そして国民生活の基礎となる安価で安定した電力が不可欠である。そのためには現在、稼働ゼロとなっている原発をできるだけ早く再稼働する必要がある。

 資料不足で審査に遅れ

 昨年7月、世界で最も厳格な原発の新規制基準が施行された。その後、9原発が再稼働を申請した。そのうち、北海道電力泊原発、関西電力大飯原発など6原発は、申請から既に半年近くになる。審査期間は当初、「半年程度」と見込まれていたが、まだ終了していない。

 審査が遅れている理由は、新基準で厳格になった地震・津波対策などに関連する電力会社側の資料が不足していたためという。それらは東京電力福島第1原発事故を受け、安全対策で最も力を入れなければならないところで、やむを得ない面がある。

 間もなく今年の審査が始まるが、少しでもスピードアップして、できるだけ早く再稼働にこぎ着けるよう、電力会社、原子力規制委員会双方に一層の努力を望みたい。

 総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)は昨年暮れ、安全性が確認された原発の再稼働を進めるとする新エネルギー基本計画案を承認した。

 ただ、エネルギーのベストミックス(最適な電源構成)については、安全審査の結果が出ていないため、数値目標は示されなかった。国のエネルギー政策も、原発再稼働問題に大きく左右されているのが現状である。

 同基本計画案では、太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの導入を通じて、原発依存度について「可能な限り低減させる」としている。だが、規模、コストや安定性などを考慮すれば、電力供給における再生可能エネルギーの役割はあくまでも補助的なものにとどまる。

 忘れてならないのは、かつて日本経済の成長と実力を支えていたのが、総電力の約3割を占めていた原子力発電だったことだ。原発が果たしてきた役割などなかったかのように考えるのは、エネルギー政策を誤らせる。

 原発の稼働停止でエネルギーコストは、年間3兆6000億円も増加している。日本のような高度に産業化された国で、しかもエネルギー消費型の産業構造に基本的変化がない以上、安価なベース電源の確保は、経済の死活問題である。

 安倍首相は、年頭の記者会見で、原発の「新増設は現在のところ全く想定していない」と語った。反原発世論に配慮した発言と思われるが、「現在のところ」という限定付きである点に留意したい。40年の寿命を厳密に守りながら一定の原発を稼働させるためには、新設は避けられない課題だからだ。

 技術継承の点でも重要

 原発再稼働そして新増設は、日本の原子力技術を育て継承していくという点でも重要である。これまでの技術はもちろんのこと、福島第1原発事故を踏まえた規制基準に対応する新たな技術は、世界に輸出できる優れたノウハウであり、未来への可能性を開くものである。

(1月7日付社説)