自動運転事故、人間の役割の重要性は不変
横浜市磯子区の新交通システム「シーサイドライン」新杉田駅で、自動運転の列車が逆走して車止めにぶつかり、乗客14人が重軽傷を負った。
鉄道業界は自動運転に力を入れているが、安全確保が第一であることを忘れてはならない。
停車位置から突然後退
事故が起きた列車は新杉田発並木中央行きの5両編成。出発に向けてドアが閉まった後、停車位置から25㍍ほど突然後退し、車止めにぶつかったという。
当時約30人の乗客がおり、一部は骨折や頭部からの出血で病院に搬送された。運営会社によれば、衝突時に20㌔以上のスピードが出ていた可能性がある。
車両内部で電気系統が断線し進行方向を切り替える信号が伝わらなかったのが原因とみられている。さらに今回の位置が断線した場合、本来は逆走時に作動する非常ブレーキがかからなくなるシステム上の欠陥も確認された。断線の原因は調査中というが、徹底究明して再発を防ぐべきだ。
自動運転をめぐっては1993年10月、大阪市住之江区のニュートラム住之江公園駅で列車が停止せず、車止めに衝突して乗客ら215人が負傷する事故が起きている。自動運転で運行する路線では、システムに不具合がないか安全性を再確認する必要がある。
全線で運行を見合わせていたシーサイドラインは、運転士が乗車した手動運転で再開した。やはり自動運転で東京都臨海部を走る「ゆりかもめ」も事故を受け、進行方向を切り替える折り返し駅のホームに係員を配置し、トラブルに対処できる態勢を取った。自動運転による事故が起きた以上、人員を配置して安全確保に努めるのは当然だ。
鉄道業界は人口減に伴う人手不足に備え、自動運転の導入を目指している。JR東日本は終電後の山手線で自動運転の実験走行を続けている。現在は車両発進などの作業を行うために運転士が乗り込んでいるが、将来は非常時対応の係員のみが乗務するようになるという。今回の事故は、こうした流れに待ったをかけた形だ。
鉄道の大事故で思い出されるのは、乗客106人と運転士1人が死亡した2005年4月のJR福知山線脱線事故だ。自動運転の導入には、ヒューマンエラーを減らす狙いもある。
だが今回の事故を見れば、自動運転を導入しても人間の役割の重要性は変わらないことが分かる。運行会社はシステムの安全性向上に不断の努力を重ねる必要がある。
こうした中、やはり横浜市の市営地下鉄「ブルーライン」の始発列車が脱線する事故が起きた。工事用車両を移動させるためレールの分岐部分にかぶせた金属製の「可動式横取り装置」がそのまま放置され、乗り上げたとみられている。列車は脱線時、時速約35㌔のスピードだったとみられ、乗務員が衝撃を感じてから約40㍍走行した。
安全最優先を肝に銘じよ
幸いにも乗客にけがはなかったが、これは人為的なミスで起きた事故だ。気の緩みがあったのではないか。鉄道の運行に携わる人たちは安全最優先を改めて肝に銘じる必要がある。