こどもの日、真の人間性と実力の涵養を
きょうは「こどもの日」。令和の時代が幕を開けてから最初の端午の節句である。「子供たちが集まって劇をするということは、楽しい遊びであると同時に、おたがいの勉強であるということを忘れないようにしたい」(劇作家・岸田国士)。子供たちの日常は岸田のいう劇のようであり、新しい出会いを通じて成長し、思いやりの心を育てていく生活の場である。
「母に感謝する」祝日
子供たちが生まれて最初に出会う人間集団は家庭である。家族に愛されずして、どうして生きる喜びを味わうことができよう。親は子供を正しく理解し、人間として許されぬことは厳しく叱り、その子供に最も適した成長を願う。親が子を思いやれば、子も親に思いやりを持つようになる。それでこそ家庭と言える。
子供が小さいうちは、特に母親の役割が大切だ。女性は、生命を新しくこの世に生み出し、人間として育てる役割があるからだ。それは女性だけが味わえる喜びでもあるが、苦労も小さくない。こどもの日の趣旨として、祝日法2条に「こどもの幸福をはかる」とともに「母に感謝する」という一文がある。夫は妻の育児により関心を持たなければならない。
一般に親が願うのは、子供が立派な大人になり、社会人として安定した職業に就くことである。そのための方策として、従来ややもすれば、さまざまな技能に通じるよう早期教育を優先しようとしてきた。
だが今日、経済のグローバル化や人工知能(AI)に象徴される科学技術の急速な発達で、未来の社会や企業の具体的な姿をなかなか見いだしにくくなった。こうした時代に対応するには、時代や国境を超えた普遍的な価値観と、本当の意味での人間性や実力を身に付けることが肝要だ。そのための教育の中心にあるのは家庭教育であり、家庭で培った価値観を中心とした幸福のかたちを、自ら築くことのできる子供を育てなければならない。
その上で今日、子供たちの幸福を図るのに、地域の人々のバックアップ、地域のコミュニティーづくりが急がれる。国や自治体はこれまでも学校の校舎などを利用し、地域の人たちに主にスポーツ活動の場を提供してきた。少子化のため、余剰の施設を抱える学校などが増えてきたからだ。
今後はスポーツだけでなく、習字やそろばんをはじめ、科学などを子供たちに教える場を提供し、その輪を広げる地域活動が欠かせない。そのためには、地域居住のボランティアやプロのスポーツ指導者、教員OBなどの人材を募り、その協力下に活動体制を整えることだ。
スポーツ活動の成果
スポーツ庁は、小学5年と中学2年を対象にした2018年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)の結果を公表した。各種目の結果を点数化した「体力合計点」で、女子が小中とも08年度の調査開始以来、最高値となった。男子は小5が横ばいだったが、中2は最高を更新した。地域のスポーツ活動の成果でもあり喜ばしい。