米中首脳会談、中国は知財保護制度の整備を


 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が開かれたアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで首脳会談を行い、米国が対中追加関税を当面凍結することで一致した。

米は追加関税を90日猶予

 米国は、年末商戦が終わる来年1月1日に2000億㌦(約23兆円)分の中国製品に対する関税の25%への引き上げを予定していた。これを90日間遅らせる一方、両国は①米企業への技術移転の強要②知的財産権の保護③非関税障壁④サイバー攻撃⑤サービスと農業の市場開放――の5分野で協議し、結論を得るとした。90日間で妥結できなければ、米国は関税引き上げに踏み切るとしている。

 両国が歩み寄り、世界経済に打撃を及ぼす深刻な事態を当面回避した格好だ。世界1位と2位の経済大国である米国と中国は、これ以上貿易摩擦を激化させるべきではない。

 米国は、中国による知財侵害を理由に制裁関税を発動している。中国には実効性ある知財保護制度の整備が求められる。

 G20サミットの首脳宣言は世界貿易機関(WTO)について、通商ルールの監視機能が不十分なことを踏まえて「機能改善に向けた必要な改革を支持する」と明記。2019年6月の大阪G20サミットで改革の進展を点検することを決めた。

 残念だったのは、昨年の宣言で明記した「保護主義と闘う」との文言が米国の反対で盛り込めなかったことだ。トランプ政権は保護主義のレッテルを貼られることを嫌がっているが、国際社会の懸念の声に耳を傾ける必要がある。

 また、首脳宣言は経済圏構想「一帯一路」を進める中国からの借り入れ増大で返済難に陥る開発途上国が出ていることを念頭に「債務の透明性と持続性の向上に取り組む」と明記。メンバー国・地域に過剰債務への配慮を求めた。

 安倍晋三首相はトランプ氏との首脳会談で、世界経済や地域の安定など幅広い分野で中国に建設的な役割を促すため、緊密に連携していくことを確認した。中国は一帯一路によるインフラ開発で影響力を拡大するだけでなく、南シナ海では中国の主権を否定した16年7月の仲裁裁判所判決を無視して軍事拠点化を進めている。日米は航行の自由を守るための取り組みを強めるべきだ。

 インドのモディ首相を加えた日米印首脳会談でも、日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、戦略的パートナーシップを深めることで一致した。この構想には一帯一路に対抗する狙いがあり、今回初めて3カ国の首脳会談が行われた意義は大きい。

日中関係改善は困難

 一方、安倍首相は習氏との会談で「首脳同士の間断のない相互往来を通じ、政治・経済・文化などあらゆる分野の交流、協力を一層発展させていきたい」と述べた。

 だが中国は、日本固有の領土である沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、尖閣周辺で領海侵入を繰り返している。こうした態度を改めない限り、日中関係の改善は困難だ。