国際捕鯨委員会、保護と利用を両立させよ


 国際捕鯨委員会(IWC)総会で、商業捕鯨再開を目指す日本の提案が否決された。

 クジラ資源の持続的な利用を目指す日本の方針が受け入れられなかったことは残念だ。

 商業捕鯨再開案を否決

 日本はこれまで30年以上にわたって商業捕鯨再開を求め、拒否され続けてきた。今回の総会では日本政府代表の森下丈二東京海洋大教授が日本人として半世紀ぶりに議長を務め、再開への期待を高めた。

 提案には捕鯨再開と併せて、反捕鯨国が関心を寄せる禁漁区の設定など「重要事項」に関する決定のハードルを、現行の「4分の3の賛成」から一定の条件付きで「過半数の賛成」に下げる仕組みも盛り込んだ。

 IWC加盟全89カ国中、捕鯨支持国は41カ国、反捕鯨国は48カ国。総会では、支持国、反対国いずれの提案も通らない状態が長年続いてきた。日本の提案は、議論を進めるための苦肉の策だった。

 日本は否決が確実な採決には持ち込ませず、明確な反対が出ない限り認められる「コンセンサス合意」の形での決着を目指した。しかし、欧米やオーストラリアなどの反捕鯨国が猛反発し、日本の提案は賛成27、反対41、棄権2で否決された。

 商業捕鯨が再開されたとしても、もちろん日本は手当たり次第にクジラを取ろうというのではない。調査捕鯨で得られた科学的データに基づき、個体数が増えた鯨類の捕獲を容認するよう求めているのだが、こうした考えに対する理解が広がらなかったのは残念だ。

 一方、反捕鯨国にとっては、1982年以来の商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を続けることが最重要課題となっている。最大の海洋生物で頭がいいとされるクジラは、イルカと共に守られるべき生き物と考えているためだ。今回の総会開催国ブラジルのクジラ保護宣言は過半数で採択された。

 だがIWCは、クジラの資源保護と持続的な利用のために設立された国際機関だ。もとより保護は重要だが、それはあくまでも資源の活用のためであることを忘れてはならない。鯨肉は高たんぱく、低脂肪、低カロリーで、疲労回復にも効果があるなど健康的な食品だ。

 その意味で、反捕鯨国が捕鯨を認めようとしないのはおかしい。クジラの過剰な保護は、イワシやサンマなど他の水産資源に悪影響を与えかねないことにも目を向ける必要がある。

 日本の提案の否決後、谷合正明農林水産副大臣は「あらゆる選択肢を精査せざるを得ない」として、IWC脱退の可能性をにじませた。

 しかし脱退すれば、動植物を取ってはならないと規定する南極条約に抵触するため、南極海での捕鯨再開の道は険しくなるだろう。

 IWCに加盟していれば、この規定の適用から除外される。日本はIWCの枠組みの中で、商業捕鯨再開への理解を得ていくことが求められる。

 設立の原点に立ち返れ

 IWC加盟国は不毛な対立を繰り返すのではなく、設立の原点に立ち返ってクジラ資源の保護と利用を両立させるべきだ。

(当記事のサムネイルはWikipediaから引用いたしました)