敬老の日、健康と生きがい保てる環境を


 きょうは敬老の日。厚生労働省によると、100歳以上の高齢者は今月15日時点で前年比2014人増の6万9785人に上った。「人生100年」時代は確実に近づいている。

 一方で、少子高齢化により労働力人口の想定を上回る減少が将来へ影を投げ掛ける中、高齢者が置かれた立場は大きく変わりつつある。

高齢者の8割に勤労意欲

 国立社会保障・人口問題研究所によると、わが国の生産年齢(15~64歳)人口はピーク時の1995年に8000万人を超えていたのが、2060年には半減すると予想されている。この労働力不足に対し、政府は外国人労働者の受け入れ増加、女性、高齢者の雇用促進などで対処しようとしている。

 そもそも生産年齢人口の減少については、年齢の上限を64歳としていることに問題があると言える。高齢者の定義を65歳以上とすることやわが国独特の定年制度がその背景にある。

 だが平均寿命や健康寿命の延びを背景に、高齢者を65歳以上とすることへの疑問が呈されている。また、定年制はわが国独特のものであり、高齢者差別との見方もある。

 例えば、定年制を廃止すれば生産年齢人口は一気に増加する。もちろん定年制は、若い人々の雇用のために必要だ。また、終身雇用や年功序列制度と一体であり、見直しはこれらわが国独特の雇用制度全体を整備する中で行わなければならない。

 17年版高齢社会白書によると、16年の労働人口総数に占める65歳以上の割合は11・8%と上昇し続けている。また、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答。70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期であっても働きたいとの意欲を持っている。

 政府の「働き方改革」では高齢者の雇用促進を掲げ、継続雇用や定年の延長の支援、就職のためのマッチング支援などを行うとしている。健康寿命が延びても、高齢者が若い人と同じように働くことはできない。しかし、長年の経験や知識を生かさないのは社会にとっても損失である。それらを生かせる働き口と出合えるかどうかが課題となる。そういう点で、マッチング事業の意味は大きい。

 もちろん高齢者の持つ経験やノウハウは、ボランティアなどの社会活動でも、その役割は小さくない。山口県周防大島町で行方不明となっていた2歳児を発見した78歳の「スーパーボランティア」の尾畠春夫さんがその代表だろう。

 「敬老の日」は「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ことが趣旨である。しかし老人という言葉には、現役から完全に引退したイメージがある。平均寿命、健康寿命の延びは、従来の老人のイメージに収まらないものになっている。

家族や国家が提供を

 敬老の意味も少しずつ変わってきてもおかしくないだろう。高齢者が健康を維持し、生きがいを持って暮らせる環境を家族や国家、社会が提供することが敬老となるのではないか。