天皇陛下傘寿 これからも国民と共に


 天皇陛下はきょう80歳、傘寿の誕生日を迎えられた。正確な記録が残る推古天皇以来、歴代天皇で在位中に傘寿を迎えられたのは、今上陛下のほかには昭和天皇だけである。誕生日を心からお祝いし、陛下の御長寿を寿ぎたい。

 平和への祈りと慰霊の旅

 陛下は昭和8年のお生まれである。小学校の最終学年の時、日本は終戦を迎えた。少年期、青年期と最も多感な時期に、陛下は太平洋戦争、終戦、そして占領と戦後の復興の時代を経験された。国家が存亡の淵に立つ中で、一身を顧みずに国と国民のために苦闘された昭和天皇のお姿を近くで見ながら成長されたのである。

 傘寿を迎えるに際しての記者会見で、陛下は80年の道のりの中で特に印象に残ったことに「先の戦争のこと」を挙げ、「前途に様々な夢を持って生きていた多くの人々が、若くして命を失ったことを思うと、本当に痛ましい限りです」と述べられた。

 陛下の平和への祈り、戦争犠牲者への深い思いは、毎年の終戦の日の戦没者追悼はもちろん、被爆地広島・長崎への御訪問、天皇としては初めてとなる沖縄御訪問、サイパン島などへの慰霊の旅で示されている。

 会見では日本人が戦後復興に払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いているとも語られた。また、終戦から60余年後に発生した東日本大震災についても「人と人との絆を大切にし、冷静に事に対処し、復興に向かって尽力する人々が育っていること」を心強く思っているとも述べられた。

 東日本大震災に際しては、陛下は不安の中にある被災地の人々と国民を励ますため、初めてビデオ映像で直接国民に語りかけられた。

 それは、常に国民と共にあることを願われる陛下の御真情の表れであった。そして陛下のお言葉から被災者と国民は、政治家の言葉などからは決して得られない慰めと励ましを得たのである。

 陛下は即位後17回にわたる海外御訪問を通して、各国との友好親善を深めてこられた。先のインド御訪問にも見られるように、人々の幸福と世界平和を願われる陛下のお姿は、世界の人々にも深い印象を残している。

 昨年2月、心臓手術を行われ、公務の負担軽減も検討された。しかし、陛下の御意向で他の皇族への公務引き継ぎなどは行われず、昨年の会見と同様、今回も「今のところしばらくはこのままでいきたい」と、公務への強い意欲を示されている。

 一方で、陛下は「年齢による制約を受け入れつつ、できる限り役割を果たしていきたい」とも語っておられる。陛下の御体調は、陛下御自身が一番理解しておられるが、やはり直接お仕えする周りの人々には、しっかりとお支えしてもらいたい。

 平成の御代を輝かしく

 「これからも日々国民の幸せを祈りつつ、努めていきたい」と陛下は述べられた。陛下に感謝し、われわれ国民は陛下の御健康と御長寿をお祈りしたい。そして世界が憧れるような幸せな国民であふれる国をつくり、平成の御代をもっともっと輝かしいものとしていきたい。

(12月23日付社説)