社会保障費推計、官民挙げての対策を急げ


 政府は65歳以上の高齢者人口がピークを迎える2040年度時点の社会保障給付費が最大190兆円に達するとの試算結果を公表した。これは18年度(121兆3000億円)の約1・6倍に上る。官民を挙げての対策が急がれる。

必要就業者数も増加

 40年度時点の社会保障費の分野別の内訳は、年金が18年度の約1・3倍となる73兆2000億円、医療が約1・7倍の66兆7000億円、介護は約2・4倍の25兆8000億円。一方、子供・子育ては約1・7倍の13兆1000億円、生活保護などは約1・4倍の9兆4000億円だった。

 40年度には65歳以上の人口が4000万人近くに達し、人口の3人に1人を占めるようになる。国民の負担増は避けられない状況だ。政府は19年10月に消費税率を10%に引き上げる予定だが、持続可能な社会保障制度を構築するには、これ以上の引き上げが必要だとの意見も出ている。

 しかし増税を実施するのであれば、そのダメージに耐えられるだけの経済成長を実現しなければならない。拙速に増税を進めれば、経済を痛めて消費税以外の税収減少を招くだろう。財政が悪化すれば社会保障にも悪影響を及ぼしかねない。

 政府は今後、社会保障の支え手を増やすため定年延長などを通じた高齢者雇用の拡大を進める方針だ。年金の支給開始年齢を遅らせる仕組みも検討する。将来の負担軽減に向け、できる限りの対策を講じるべきだ。

 一方、医療福祉分野で必要な就業者数も増える。政府の推計では、18年度の約823万人から40年度には約1065万人となる。日本全体の就業者数は926万人減少するため、深刻な人手不足に陥る恐れがある。

 ITの導入推進と共に外国人労働者の活用なども検討する必要があろう。地域の高齢者を、配膳などの簡単な仕事を行う「介護助手」として雇う介護施設もある。

 介護予防の取り組みも強めるべきだ。健康上の問題がなく、日常生活が制限されることなく送れる期間を示す「健康寿命」は16年、男性72・14歳、女性74・79歳だった。

 10~16年の計3回の調査の平均では、男女ともに山梨県が1位で、男性72・31歳、女性75・49歳。男性は2位が愛知、3位が静岡で、女性は2位が静岡、3位が愛知だった。この3県では、健康に対する啓発活動が活発で、がん健診の受診率が高いことなどが要因として考えられている。これを全国に広げていきたい。

 国は今年度から、介護予防や自立支援に積極的な自治体に交付金を出す。平均寿命と健康寿命を共に延ばしつつ、その差を縮めていくことが重要だ。

少子化抑制も不可欠

 社会保障を維持するには、少子化を抑えることも不可欠だ。育児支援の一層の充実が求められる。このほか、自治体や企業が行っている婚活イベントなど独身男女の出会いの場をさらに増やし、結婚を後押ししたい。社会全体で結婚や家庭の素晴らしさを若い人たちに伝えていく必要がある。