エネルギー計画、原発新増設への道筋付けよ
政府が今夏に改定する「エネルギー基本計画」の原案が示された。
2030年の最適な電源構成を原発比率20~22%などと定めた従来の目標を維持したが、原発の新増設や建て替えの明記を見送ったことは踏み込み不足だと言わざるを得ない。
電源構成目標は踏襲
経済産業省は15年7月、最適な電源構成目標を初めて設定し、30年時点で原発20~22%、再生可能エネルギー22~24%などとした。今回の原案ではこれらの数値をそのまま踏襲し、原発は14年計画と同様に「重要なベースロード電源」と位置付けられている。
原発の構成目標を達成するには、30年時点で30基程度の稼働が必要とされる。老朽化で廃炉となる原発も増えつつあることから、新増設や建て替えが不可欠のはずだ。だが、原案では明記せずに「原子力の安定的な事業環境の確立に取り組む」「再稼働などを通じた現場力の維持強化が必要」などとするにとどまった。
原発は発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、活用すれば地球温暖化対策の強化にもつながる。原発の燃料であるウランは、オーストラリアやカナダなどの比較的政情の安定した国でも産出するため、調達をしやすい。
同じ規模の電力を生み出すのに、火力発電と比べて少ない量の燃料で可能だという利点もある。エネルギー安全保障の観点からも原発の存在は重要だと言えよう。
東京電力福島第1原発事故の発生以降、国内で原発の活用に対する反発は根強い。これまでに再稼働した原発は8基にとどまっている。政府は再稼働を加速させるとともに、国民の理解を得て原発新増設への道筋を付けなければならない。
一方、原案では再エネについて「主力電源化への布石を打つ」と初めて記載した。しかし再エネは、天候によって発電量が左右されるという課題を抱えている。例えば、太陽光発電は雨や曇りの日、夜間などには発電できない。
課題克服には蓄電池の性能向上や送電網の増強などが求められる。ただ電源構成を見直さなかったのは、今後の技術革新や普及の見通しなどに不透明な点が多いためだ。
再エネをめぐっては、固定価格買い取り制度で電気料金に上乗せされ、国民負担となっている費用が年3兆円規模に膨らんでいることも大きな問題となっている。「主力電源化」を実現できるか疑問が残る。
原案ではまた、50年を視野に入れた経産省の長期エネルギー戦略にも言及。「脱炭素化」に向け、原発を含む「あらゆる選択肢の可能性を追求する」とした。代替エネルギーとして期待される水素の活用も課題に挙げている。
多様な選択肢が必要
政府は温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定に基づき、50年までに温室効果ガスを80%削減するとの目標を掲げている。この目標達成のため、エネルギー資源のほとんどを輸入に頼る日本は、多様なエネルギーの選択肢を持つ必要がある。