海洋基本計画、安保なくして開発・利用なし
わが国の今後5年間の海洋政策の指針となる「海洋基本計画」が閣議決定された。
第3期の今回は、中国や北朝鮮の脅威を明記し、領海警備や離島防衛など安全保障を前面に打ち出した。
厳しさ増している情勢
背景には海洋をめぐる環境がここ数年厳しさを増していることがある。中国公船が沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返し、日本海の好漁場「大和堆」では北朝鮮の違法操業が目立っている。シーレーン(海上交通路)に当たる南シナ海では、中国が軍事基地化を進めている。
安倍晋三首相は、海上保安庁の観閲式で「わが国の周辺海域を取り巻く情勢は過去に例を見ないほど厳しさを増している」と指摘。「これまで以上に多くの重要な使命を果たしていくことを期待している」と強調した。
過去の海洋基本計画では資源開発などが柱となってきた。政府は開発に力を入れてきた。わが国の排他的経済水域(EEZ)内の海底にレアアース(希土類)やレアメタル、メタンハイドレートなどの豊かなエネルギー・鉱物資源が眠っている。最近も南鳥島周辺のEEZに世界の消費量の数百年分に当たる大量のレアアースが存在することが明らかになった。
海底鉱物資源の開発・利用の一番の課題は経済性であるが、レアアースを効率よく回収する技術もほぼ確立されつつある。しかし海洋の安全が確保されなければ、その技術も生かすことはできない。こうした有望な資源の眠る海域で、中国はわが国の同意を得ないで海洋調査などを行っている。
豊かな漁場に恵まれたわが国は、海から水産資源の恩恵を受けている。一方で中国や韓国、北朝鮮の違法操業に手を焼いている。厳しく取り締まるため、海保の体制をさらに強化していくべきだ。
昨年は北朝鮮からの漂着船が東北地方の日本海側などに多数流れ着き、乗組員による窃盗事件も起きた。基本計画は、不審船などの動きを監視し、関係政府機関と情報を共有する「海洋状況把握(MDA)」を強化すると明記している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星を活用したり、米軍などとも情報を共有したりする。自衛隊と海保がそれぞれ集めた海洋情報を一元化するシステムも築く。情報力が大きな比重を占める現代、海洋国・日本にふさわしい強力な体制を構築してほしい。
海洋安保で重要性を増すのが国境の離島である。政府は離島での人口減を食い止めるために昨年4月、「有人国境離島法」を施行させ、産業の活性化、移住などを支援している。それが日本を守ることを知らせていかなければならない。離島の魅力をさらに発信していきたい。
人材育成へ教育の充実を
安倍首相は総合海洋政策本部の会合で「四方を海に囲まれたわが国にとり海洋政策は死活的に重要だ。その成否はわが国の国益に直結する」と述べた。しかし、こうした認識をどれだけ日本国民が持っているか。
将来は海洋資源大国も夢ではない日本。海洋人材の育成のためにも、義務教育課程での海洋教育の充実が大きな課題だ。