憲法記念日、改憲発議へ堂々と議論進めよ


 日本国憲法が施行されてから71回目の憲法記念日を迎えた。国際情勢は大きく動いており、人工知能(AI)をはじめ科学技術の発展は著しい。

 わが国は少子高齢化が進み、国や自治体の大胆な改革や国民の繁栄に向けた戦略が求められる。そのために必要な憲法の条文修正など、国民の手で改正を実現して初めて憲法が定着したと言えよう。

 占領下の特殊事情を反映

 わが国は長らく憲法改正の法的手段を持たない国だった。敗戦後、占領下で連合国軍総司令部(GHQ)によって起草された現憲法には、戦力の保持や交戦権を認めない9条が存在する一方、巨大自然災害など緊急事態に対処する規定はない。米国の影響で民主主義が進んだが、占領下の特殊事情を反映した憲法であることは否めない。

 ただし、改正のための条文は存在する。戦争状態は講和条約により終結するのであり、占領国は、敗戦国が主権回復後に憲法改正を行うことを想定していたのである。

 それにもかかわらず、96条の改正手続きの条文を受けた法整備が賛否両論の中で国会審議に上ったのは今世紀に入ってからで、2007年に国民投票法が成立するまで60年もかかった。が、この時は与野党が対決し、国会に新設された憲法審査会は開店休業の状態になった。

 14年に改正国民投票法が与野党8党による賛成で成立して憲法審査会は軌道に乗ったが、国会が憲法改正に関する審議を行い得るようになってから、まだ僅かな年月しか経(た)っていない。

 憲法改正論議が進まない主因は、いまだに東西冷戦時代のイデオロギー対立から国内政治が脱却していないからだ。

 現憲法制定の当時に始まった冷戦では、東側の旧ソ連など共産主義国と西側の米国など自由主義国が激しく対峙(たいじ)した。わが国は講和条約と同時に日米安保条約を結ぶコースをたどったが、国内で共産主義国を支持する共産党・社会党などと、米国を支持し日米安保体制を築いた自民党が対立した。

 共産党は現在も党綱領で共産主義を展望し、日米安保に反対して9条の「完全実施」と称して自衛隊解消を記している。同党と選挙や国会対策で共闘することが多い立憲民主党には、旧社会党時代からの支持母体である労働組合の支援を受ける議員らがいる。

 今日もなお、国家の大計に比較すると小さな問題に終始して審議拒否の口実にする国会戦術など、冷戦当時と大差ないのは、社会主義・共産主義の理想像を追求する姿勢が党ないし議員にあるからだ。特に、9条改正に向けた論議を「戦争する国」と侵略への動きのように印象操作する言動には問題がある。

 日本でも普通の風景に

 自民党は今日、憲法改正について「自衛隊の明記」「緊急事態対応」「合区解消・地方共同体」「教育充実」の4項目の改正案たたき台をまとめている。ほかの党も議論を進めてほしい。

 時代の変化への対応に必要な改憲論議を堂々と行い、改憲案を国会発議して国民投票を実施するのを、諸外国と同様、日本でも普通の風景にしたい。