羽生連覇・宇野銀、フィギュアの歴史に残る快挙
平昌五輪でフィギュアスケートの羽生結弦選手が、男子では66年ぶりとなる連覇を果たした。五輪初出場の宇野昌磨選手も銀メダルに輝いた。日本選手が金銀を獲得する快挙である。
圧巻の演技で世界を魅了
2014年のソチ五輪で金メダルを獲得し、歴代最高得点(330・43)の記録保持者である羽生選手だが、連覇への道のりは茨の道であった。ソチ以降の4年間は「けがばっかり」(羽生選手)。14年中国杯で他の選手と激突し、腹部や頭部などを負傷した。その後右足首や左足甲も痛め、昨年11月には右足首靱帯を損傷。練習でジャンプの本数を抑えるような状況だった。
ショートプログラム(SP)は、ほぼ3カ月実戦から離れていたことを忘れさせる圧巻の演技で首位。強く美しい羽生選手が戻って来たことを印象付けた。
それでもSP終了の段階で、2位のハビエル・フェルナンデス選手(スペイン)との差は4点余り。4分間のフリー演技では、スタミナも要求される。試合から離れていたことが影響しないか。大きなミスが出れば、逆転を許してしまう――。応援する人たちも、祈るような思いで演技を見たことだろう。
それがどうだろう。やはり羽生は、技術面、精神面での図抜けた強さの持ち主だった。4回転トーループの着氷が乱れて短発になるミスもあったが、続くトリプルアクセルを連続につなげて取り返した。負傷を誘発したルッツも右足首で何とかこらえた。「この結果はこれからの人生でずっとつきまとう。勝たないと意味がない」とあくまで勝負にこだわった。
冬季五輪の花とも言うべきフィギュアスケートは、世界の大きな注目の的である。羽生選手のフリーの演技は、映画「陰陽師」からとった曲。コスチュームは、平安時代の貴族が着用した直衣(のうし)をもとにデザインしたものだった。笛の音などが印象的な和風の音楽に合わせ、素晴らしい演技で観客を魅了した。
銅メダルを獲得したフェルナンデス選手も、母国が舞台の小説「ドン・キホーテ」を原作とした「ラ・マンチャの男」で母国の文化を誇り高く演じた。五輪は自国文化への誇りを表現する場でもある。
宇野選手の五輪初出場での銀メダル獲得もあっぱれと言うしかない。ソチ五輪王者の羽生選手を追いながら研鑽を重ねた。同世代でしのぎを削ってきた金博洋選手(中国)、ネーサン・チェン選手(米国)とともに4回転争いに割って入り、誰よりも早く4回転フリップを決めた。
フリーでは最初の4回転ループで転倒。しかし、その後をほぼ完璧に演じきった。「悪い中でもミスを一つ以内に抑えるという練習が、試合でも生きた」と冷静に自己分析する。「五輪に特別なものは感じなかった」というクールさは、この選手の大きな武器になるのではないか。
黄金時代に一層の輝きを
男子フィギュアは、若手の台頭などで競争はさらに激しくなるものと思われる。そういう中でも「日本一になるのが世界で一番難しい」(宇野選手)のも事実。羽生、宇野両選手を先頭に日本の男子フィギュア黄金時代をさらに輝かせてもらいたい。