北方領土の日、4島一括返還に強い決意示せ
38回目の「北方領土の日」を迎えた。我が国固有の領土である択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島が旧ソ連に占拠され、今なお、その状態が続いている。安倍晋三首相はきょう開催の北方領土返還要求全国大会でロシアに改めて抗議するとともに、4島一括返還に向けた強い決意を明確にすべきだ。
共同経済活動へ交渉進む
旧ソ連が北方領土を不法占拠してから、70年以上が過ぎた。あまりにも長い歳月だ。故郷を追われ、一刻も早い帰還を望む旧島民はもとより、4島返還を実現しようと努力してきた人々の間には、返還への熱意と同時に疲労感さえも漂う。
だからこそ我々は、返還運動を文字通りの国民運動とし、一体となって盛り上げていくことが必要だ。国民全体の強い意志こそが、ロシアを相手とした困難な交渉を支え、返還実現のための不可欠な要素である。
この北方領土をめぐり、日露間で共同経済活動の実施に向けた交渉が進んでいる。安倍首相は、「新しいアプローチ」として提案した共同経済活動を、領土問題を解決し平和条約を締結するための「重要な一歩」と位置付ける。観光や風力発電、養殖や温室野菜の栽培など5事業を具体化する構えであり、安倍首相が5月にロシアを訪問し、プーチン大統領との首脳会談での合意を目指している。
北方領土返還交渉は、強硬姿勢を強めるプーチン政権下で停滞した。ゴルバチョフ時代、エリツィン時代に積み重ねてきた日露交渉にプーチン大統領は背を向け、「第2次大戦の結果であり、議論の余地はない」と強弁。4島返還要求に強い不快感を示し、日ソ共同宣言に基づく2島返還で決着を付ける考えを表明した。ロシアがウクライナのクリミアを併合したことを受け、欧米諸国が科した対露経済制裁に我が国が加わって以降、この姿勢はより顕著となった。
この閉塞(へいそく)状況を打破するために「新しいアプローチ」が必要だった。経済制裁、国際的な孤立に苦しむロシアは、安倍首相の呼び掛けに飛び付いた。経済制裁との整合性という課題は残るものの、ロシアを交渉の場に出させるには、これしかなかっただろう。
無論、これまでの経緯を振り返れば、ロシアが経済協力だけを引き出し、領土交渉を置き去りにする動きに出ることは間違いないだろう。共同経済活動の協議を行う一方、択捉島や国後島に最新鋭の地対艦ミサイルを配備したり、択捉島にある飛行場を軍民共用化したりするなど、軍事基地化を進めている。
また、色丹島をロシアの経済特区「先行発展地域」に一方的に指定するなど、実効支配のさらなる強化も推し進めている。
露のペースに呑まれるな
ロシアを相手とする領土交渉は簡単ではない。政府は北方領土返還の実現という目標に向け、ロシアのペースに呑(の)まれないよう、交渉を進めるべきだ。また、その政府を支えるのが、4島返還を願う国民の意志だ。われわれは改めて北方領土をめぐる歴史と、返還運動を支えてきた先人たちの思いを振り返り、返還に向けた決意を新たにすべきだ。