東京圏転入超過、一極集中打破に抜本的施策を


 東京圏への一極集中の流れが止まらない。総務省発表の2017年の人口移動調査によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を上回る「転入超過」が11万9779人となった。東京圏の転入超過は22年連続で超過数は前年より1911人多くなった。

若者が大学進学や就職で

 他の三大都市圏では、名古屋圏が4979人、大阪圏が8825人と、ともに5年連続の転出超過だった。転出超過は40道府県に上り、最多は福島県の8395人。兵庫、北海道、新潟と続いている。福島をはじめ広島、京都など23府県で超過幅が広がり、東京圏への一極集中はより鮮明となっている。

 総務省によると、転入者の多くは15~29歳の若年層が占め、大学進学や就職を機にした若者の東京圏集中が止まらない状況が浮き彫りになっている。こうした状況は「地方消滅」だけでなく、わが国全体の出生率の低下、一層の少子高齢化、人口減に直結する。

 東京圏への人の流れは、戦後間もなく地方の若者が集団就職で東京や大阪に出て行った時代から70年近く続いている。その流れを変えようとするならば、背景にある日本の社会構造や産業構造、さらには人々の価値観にまで切り込んだ国の方向の大転換を必要とする。その施策はただ即効を求めるのではなく、国家百年の計、少なくとも数十年先を見越したものでなければならないだろう。

 政府は、東京23区の大学の定員増加を規制し、地方大学振興の交付金を導入する新法案を今国会に提出する予定だ。一極集中を是正するための施策として評価できるが、どれだけの効果があるか。地方の大学に学ぶ若者たちが地方に定着するには、働く場所がなければならない。そのために、いかに地方で産業を起こすか、あるいは企業を誘致するかが問題である。

 地方の大学への若者の流れをつくるだけでなく、地方の産業振興、雇用確保につながるものとするための施策を国、地方が連携してつくり上げていく必要がある。

 政府や民間の研究所の調査によると、20~40歳代の人たちを中心に都市から地方に移住を希望する人々が増えてきている。自然の豊かな環境で農業その他の仕事、あるいは子育てをしたいという人たちだ。

 全体から見るとまだ少数派だが、その生き方はある面、画期的である。娯楽施設が有り余るほどあり、便利で情報があふれる都会生活より、自然が豊かで地域との関わりが密な地方で、子育てを中心にした人生を送ろうという古くて新しい価値観を持った人たちである。幸いIT化によって、東京圏と地方との情報格差は緩和されていることもこうした人たちを後押ししている。

地方移住希望者を支えよ

 政府はまた18年度から就業や子育て支援を柱としたUターンやIターンなどの地方移住策の抜本強化を進める方針だ。新しい価値観に目覚めた人たちを力強く支援し、地方移住のいまだか細い流れを大きなトレンドに育てていくような大胆な施策が望まれる。