ミサイル防衛、ラブロフ氏の批判は的外れだ
ロシアのラブロフ外相は、日本が米国製の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を決めたことに関して、日本が運用するとの日本側の説明に「深刻な疑念を抱いている」と表明した。実際に運用するのは米国であるとし、巡航ミサイルのトマホークを念頭に置いて攻撃的兵器も発射できるとの見方を示した。
陸上イージス導入に反発
イージス・アショアの導入は、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対応するためのものだ。陸上イージスは、海上自衛隊のイージス艦に搭載するミサイル防衛機能を地上に固定配備する装備。陸上に置くことで常時、北朝鮮からの攻撃に対処できる態勢の構築が可能となる。
北朝鮮が昨年発射した弾道ミサイルの中には、日本上空を通過したものもある。日本が弾道ミサイル防衛(BMD)態勢を強化するのは当然であり、ラブロフ氏の批判は的外れだ。
この発言に対し、小野寺五典防衛相は「弾道ミサイル攻撃に対する純粋に防御的なシステムだ。ロシアを含め周辺諸国に脅威を与えるものではない」と反論。「あくまでも我が国防衛のため自衛隊が運用する」と述べた。
一方、小野寺氏はイージス・アショアについて、巡航ミサイルにも対処させる考えを示している。これは巡航ミサイル開発に力を入れている中国やロシアを念頭に置いたものだ。中国は1500㌔、ロシアは4500㌔の射程の巡航ミサイルを保有しており、ともに自国から日本に届く。日本の安全を守るために必要な措置だと言えよう。
北方領土を含む極東周辺での軍事力強化を進めるロシアのプーチン政権は、日本のイージス・アショア導入に対して日露平和条約締結交渉に「否定的な影響を与える」と牽制(けんせい)。イージス・アショアは中距離ミサイルの設備に転用できると主張し、米国による中距離核戦力(INF)全廃条約違反と非難している。
ロシアが日本を批判するのは、イージス・アショアを米国が世界中で整備するBMD網の一環と見なしているためだ。ロシアはこれまでも、北大西洋条約機構(NATO)加盟国防衛のためのルーマニアへの陸上イージスや、在韓米軍への最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備にも反発してきた。
しかしロシアがなすべきことは、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に影響力を行使し、核放棄を促すことではないか。この点で、ロシアの取り組みは不十分だと言わざるを得ない。
ラブロフ氏は、北朝鮮問題について「米朝の直接接触を支援する用意がある。6カ国協議の枠内の対話も同様に支援する」と語った。だが、対話は北朝鮮の核放棄が前提条件だ。6カ国協議が北朝鮮によって核開発のための時間稼ぎに利用されたことを忘れてはならない。
ロシアの思惑見極めよ
トランプ米政権が昨年末に公表した「国家安全保障戦略」ではロシアについて、大国としての地位を回復していると指摘し、米国と同盟国を引き離そうとする「危険なライバル」だと主張した。日本もロシアの思惑を見極めて対応する必要がある。