原子力協定延長、核燃料サイクル実現が急務だ


 使用済み核燃料の再利用を日本に認める日米原子力協定が7月の有効期限以降も自動延長されることが決まった。

 原子力協定は核物質や原子力関連機材の輸出入の際に軍事利用や第三国への流出を防ぐために政府間で交わす取り決め。日米協定は使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、再び発電に使う「核燃料サイクル」を認めるものだ。

 日米に見直しの動きなし

 プルトニウムは核兵器への転用が可能なため、核保有国以外が抽出することは認められていない。日米協定は非核保有国の日本にとって特権的な内容だ。

 この協定は1988年に発効し、今年7月16日に30年の期限を迎える。破棄や再交渉には6カ月前の通告が必要だが、日米双方に見直す動きはなかった。米国は北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事力拡大などを踏まえ、日米関係に水を差しかねない協定見直しの必要性は低いと判断したようだ。

 エネルギー資源の9割以上を海外からの輸入に依存する日本にとって、核燃料サイクルはエネルギー安全保障の観点からも極めて重要だ。燃料を再利用できるだけではなく、高レベル放射性廃棄物の体積を減らしたり、有害度を低下させたりすることもできる。

 菅義偉官房長官は「わが国の原子力活用の基盤の一つを成すだけでなく、日米関係の観点からも極めて重要だ」と説明していた。協定延長を歓迎したい。

 だが、日本では青森県六ケ所村の再処理工場の稼働遅延やプルトニウムを燃料とする高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉など核燃料サイクルをめぐる政策は停滞している。

 もんじゅは1994年に初臨界を達成したが、95年にナトリウム漏れ事故を起こすなどトラブルが相次ぎ、運転は250日にとどまった。1兆円以上が投じられながら十分な成果を出せないまま廃炉が決まった。再処理工場の完成時期も昨年末、2018年度上期から21年度上期に延期された。これで延期は「時期未定」としたケースを除いて23回目となる。

 懸念されるのは、協定が今年7月以降、日米どちらかの政府が通告すれば6カ月後に失効することだ。期限を定めた長期の延長ではないため、非常に不安定な状態となることが避けられない。

 日本が国内外に持つプルトニウムは約47㌧に上る。これは核兵器6000発分に相当する。保有量を減らせなければ、核拡散防止などの観点から米国内での協定見直しを求める声が高まる可能性もある。協定が取り消された場合、再処理工場の運営などは難しくなる。

 余分なプルトニウムを保有しないことは国際公約でもある。米国をはじめとする国際社会の理解を得るためにも、核燃料サイクルの実現を急がなければならない。

 技術獲得や人材育成を

 もんじゅの廃炉後も、日本は高速炉の国内開発を継続する方針だ。当面は、核燃料サイクル政策を維持するフランスの高速炉「ASTRID(アストリッド)」の開発に協力するが、技術獲得や人材育成が期待される。