新成人に贈る、混迷時代の変革の原動力に
きょうは成人の日。総務省統計局の推計では、今年新成人となる人は123万人で昨年とほぼ同数だ。
内訳は男性63万人、女性60万人で、全人口に占める割合も昨年と同じ0・97%という。
結婚願望が強い世代
新成人が生まれた1997年は、日本がサッカーワールドカップに初出場を決めた年である。IT社会の真っただ中で育ち、インターネットやネット交流サイト(SNS)の利用が当たり前の世代だ。一方で中学時代には2011年の東日本大震災を直接間接に体験している。
結婚相手紹介サービス会社、オーネットが新成人となる若者600人を対象に行った意識調査では、83・8%が「結婚したい」と回答。02年以降で最も高い割合となったという。
この世代の結婚願望が強い理由としては、やはり東日本大震災を通し、人と人の絆、とりわけ家族の絆の大切さを感じ取ったからではないか。中学生ともなれば、自分の将来や人生などについて純粋な心を持って考えるようになる。家や財産、最悪の場合は命を失っても、最後に残るのは心のつながりであることを感じたはずである。
家族の出発になるのが夫婦である。新成人には、社会人として、また将来のよき家庭人へのスタートを切ってもらいたい。
ネット世代の彼らには、ネット社会の便利さ手軽さだけでなく、いびつさにも目を向け、玉石混交の情報の中で玉と石を見分ける力が求められる。そのためには、名著そして新聞を読むことを奨めたい。それによって地に足の着いた判断力を身に付けてほしい。
若い人たちが関心を持つ雇用情勢に関しては、昨年11月の有効求人倍率が1・56倍と43年10カ月ぶりの高さとなった。20年には東京五輪・パラリンピックも開催されるなど、明るい材料も少なくない。
一方、北朝鮮の核・ミサイル危機や中国の覇権主義的な軍拡路線など、わが国をめぐる安全保障環境はこれまでになく厳しい。中東や欧米ではイスラム過激派を中心とするテロ事件も頻発しており、世界は不安定で不確実性を増している。
こういう状況下で、若い人たちがなしうることは限られているかもしれない。だが、時代の転換期に歴史の歯車を回し、変革の原動力となった若者たちがいたことも忘れてはならない。
今年は明治維新から150年となる。欧米以外では初めての近代的な国家の誕生、アジア近代化の先駆けとなった維新を成し遂げた志士たちの多くは20代から30代の青年であった。
欧米列強が東アジアに植民地を求めて進出を強める中、それに対抗する国家体制への脱皮が求められた。約250年続いた徳川幕藩体制を崩壊させることは容易ではなかったが、変革の起爆剤となったのが若き志士たちの行動力であった。
とらわれない発想に期待
世界、そして日本が大きな変革期に来ていることは確かだ。既成概念にとらわれない若い人たちの発想と行動力が求められる。不確実性の時代を確実なものにしていくためにも若い力に期待したい。