糖尿病1000万人、生活習慣改善へ啓発強化を


 糖尿病が強く疑われる成人の患者が、2016年に推計1000万人に上ったことが、厚生労働省の国民健康・栄養調査で分かった。

 高齢化の影響などとみられるが、国民の生活習慣改善に向けた啓発などの取り組みを一層強化する必要がある。

 高齢者人口の増加で

 調査は昨年10~11月、約2万4000世帯を対象に行った。このうち、糖尿病は成人約1万1000人の血糖値や治療歴を分析。その結果、患者は12・1%を占め、人口推計から1000万人と算出した。

 糖尿病患者の推計は4~5年ごとに実施される。有病率の高い高齢者人口の増加に伴い、統計の残る1997年の690万人から右肩上がりで推移し、今回は前回の2012年から50万人増えた。

 糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気。放置しておくと血管が傷つき、失明や腎不全などを引き起こし、足の切断を余儀なくされることもあるが、初期は目立った自覚症状がないのが特徴だ。健診で血糖値が基準値を超えた場合は、すぐに医師の診察を受けることが欠かせない。

 一方、今回の調査では糖尿病の可能性が否定できない「予備軍」が、ピークだった07年の1320万人から1000万人に減少した。08年度から特定健診(メタボ健診)や特定保健指導が始まっており、予防効果が出ているとみられている。

 糖尿病は死因の上位を占めるがんや心筋梗塞、脳梗塞のほか、認知症のリスクも高めるため、早めの対応が重要だ。また、血糖値を下げるには服薬だけでなく、バランスの取れた食事や適度な運動を生活に取り入れることが求められる。

 食事に関しては、興味深い研究がある。東北大と岡山県立大の研究チームが13年3月に発表したもので、日本の家庭の標準的な1週間の食事メニューを1960年から15年置きに再現して凍結乾燥し、マウスに与え続けたところ、75年当時の食事が最も内臓脂肪を蓄積しにくく、糖尿病のリスクの低いことが分かったという。

 75年の食事は2005年の食事に比べ、たんぱく質や脂質を魚介類や植物から多く摂取し、相対的に肉類や牛乳・乳製品が少ないほか、ワカメやヒジキなどの海藻が多く、バランスが取れている。

 1960年の食事は米が非常に多く、塩分が多かった。健康を保つには、サプリメント(栄養補助食品)の摂取などよりも、食事の中で多様な食材を少しずつ取ることが望ましい。

 日本人の平均寿命は世界トップレベルである一方、介護を受けずに日常生活を支障なく送れる期間を示す「健康寿命」とは男女とも10歳前後の差がある。平均寿命を延ばし、かつ健康寿命との差を縮小する上でも、糖尿病予防は重要だと言える。

 国民の一層の健康増進を

 厚労省は、2015年度に50%だったメタボ健診の受診率を70%以上にすることを目指している。

 このような目標を着実に達成し、国民の一層の健康増進に努めてほしい。