尖閣国有化5年、日本は実効支配を強化せよ
沖縄県・尖閣諸島の国有化から、あすで5年を迎える。現在のわが国においては、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威への対処が喫緊の課題だが、一方的に領有権を主張し、尖閣周辺で領海侵入を繰り返す中国への対応にも手を抜くことはできない。抑止力の向上に努めるとともに尖閣の実効支配を強化する必要がある。
領海侵入繰り返す中国
2012年9月に当時の野田政権は、尖閣を長期にわたって平穏かつ安定的に維持・管理するために国有化に踏み切った。だが中国は強く反発し、公船による接続水域や領海への侵入を繰り返している。
海上保安庁は昨年2月、大型巡視船12隻による尖閣警備の専従体制を完成させた。しかし、中国の動きを抑えることはできていない。今年の領海侵入の回数は、先月末までで既に22回に上っている。中国による主権侵害が常態化していることを、日本はもっと深刻に受け止めなければならない。
先月開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条が尖閣に適用され、尖閣に対する日本の施政を損おうとする行動に反対することを再確認した。このこと自体は評価できるが、日本も来年3月に編成される「水陸機動団」の効果的な運用などで、尖閣防衛体制をさらに強化する必要がある。武力攻撃と見なされない「グレーゾーン」事態への備えも万全にすべきだ。
尖閣は日本固有の領土だ。1895年に清国の支配が及んでいないことを確認した上で領土に編入した。中国が尖閣の領有権を主張するようになったのは、国連機関の調査で東シナ海に石油埋蔵の可能性があると指摘された後の1970年代からだ。それ以前の中国の地図では、尖閣を沖縄の一部として扱い、日本領と認識していたことも分かっている。
中国の主張が不当であることは論をまたない。日本は国際社会に情報発信し、尖閣をめぐる領土問題は存在しないとの認識を広めていく必要がある。
中国では今月から、尖閣について「わが国の不可分の領土」と位置付ける新たな教科書が使われている。尖閣などを主権・領土問題で譲れない「核心的利益」と見なし、対外的に強硬路線を取る習近平指導部の方針を反映したものだ。尖閣のほか、南シナ海やチベット、新疆、台湾を中国の固有の領土としているが、「力による現状変更」を正当化するものだと言わざるを得ない。
北朝鮮が6回目の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を強行し、国際社会の注目が集まる中、中国は南シナ海の軍事拠点化を着々と進めている。昨年7月に南シナ海における中国の歴史的権利を否定したオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決も無視したままだ。尖閣問題を抱える日本にとって決して人ごとではない。
公務員常駐や施設建設を
尖閣を守るには、実効支配を強化することが欠かせない。公務員の常駐や灯台、通信施設の建設、ヘリポート、港の整備などを検討すべきだ。