籠池夫妻逮捕、特捜部は疑惑の徹底究明を


 大阪地検特捜部が、学校法人「森友学園」(大阪市)の前理事長の籠池泰典容疑者夫妻を逮捕した。

 特捜部は疑惑を徹底究明する必要がある。

 国の補助金詐取の容疑

 逮捕容疑は、学園が開設を目指した小学校の校舎建設工事をめぐり、実際より高い金額が記された工事請負契約書を提出して国の補助金計約5600万円をだまし取ったというものだ。

 籠池容疑者らは設計事務所の役員らと共謀し、校舎建築費を23億8400万円余とする虚偽の工事請負契約書を作成。2016年2月に補助金を交付する社団法人に提出した。一方、その前に施工業者と総額約15億5500万円の工事請負契約を結んでいた。特捜部はこちらが正しい工費で、水増しで不正請求されたとしている。

 このほか、学園が運営する塚本幼稚園の専従教員数や障害などで支援が必要な園児数を偽って申請し、府の補助金計約6200万円を詐取した疑いも持たれている。一連の容疑が事実であれば、極めて悪質だと言わざるを得ない。

 籠池容疑者は1995年、学園のトップに就くと、しつけや礼儀作法を重んじ、日本の伝統文化を尊重する保守主義路線を前面に押し出した。園児には教育勅語を暗唱させた。しかし、このような事件を起こしたのは教育者としての自覚が欠けていたからだろう。

 森友学園問題の発端は、大阪府豊中市の国有地が鑑定評価額から「埋設物(ごみ)の撤去費」である約8億円が値引きされて1億3400万円で学園に売却されたことだ。この問題では、過大な値引きで国に損害を与えたとする背任容疑で、財務省近畿財務局の職員らが告発されている。特捜部は捜査を重ね、真相を明らかにすべきだ。

 籠池容疑者は3月の国会証人喚問で、安倍晋三首相夫人の昭恵氏や夫人付き職員、政治家の実名を次々と挙げ、官僚の忖度(そんたく)や政権の関与を示唆するなど、根拠不明の発言で世間を騒がせた。一方、自分に都合の悪いことに関しては「刑事訴追を受ける可能性がある」と証言を拒否。自分に対する捜査の動きを「国策捜査だ」と批判した。こうした姿勢は不誠実だ。籠池容疑者は今からでも疑惑の全容解明に全面的に協力する必要がある。

 通常国会では多くの時間が森友問題の審議に割かれた。しかし結局、事実解明への有力な手掛かりは得られなかった。確かに、森友問題や国家戦略特区を活用した学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐる問題は国民の関心も高い。だが審議では、安倍首相や昭恵氏に重大な疑惑があるかのように印象付ける野党の姿勢が目立った。

 東アジア情勢を論じよ

 中国の強引な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発で緊迫する東アジア情勢について、通常国会で十分な論議が行われなかったのは残念だ。

 北朝鮮は2度目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を強行し、中国は東シナ海の日中中間線付近でガス田開発拡大を進めている。こうした問題について、閉会中審査を開いて論議すべきだ。