米露関係、懸案解決で協力できるか疑問
トランプ米大統領は昨年の大統領選の時からロシアとの関係修復を模索してきた。今月初めに実現したプーチン大統領との初の首脳会談では良好な滑り出しを演出したが、両国間には懸案が山積しており、関係改善につながるかは不透明だ。
G20の際に首脳会談
ロシアとの「リセット(出直し)」を目指した米大統領はトランプ氏だけでない。ブッシュ元大統領(子)もそうだった。だが、2003年のイラク戦争や08年のグルジア紛争で米露は対立を深めた。
オバマ前大統領も米露間の新戦略兵器削減条約「新START」に調印するなど関係改善に熱心に取り組んだ。しかしプーチン氏が12年に大統領に返り咲くとウクライナ南部クリミア半島の併合をめぐり対立し、対露制裁に踏み切った。
トランプ政権発足後も、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして、米軍が巡航ミサイル「トマホーク」をシリア空軍基地に発射したことで、米国はアサド政権の後ろ盾であるロシアと真っ向から対立。米露関係は「史上最低」(トランプ氏)の水準にまで悪化した。
こうした中、トランプ、プーチン両氏は、ドイツのハンブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議の際に初顔合わせを実現。会談は予定の30分を大幅にオーバーし、2時間15分に及んだ。会談に同席したティラーソン米国務長官は、双方は「会ってすぐに打ち解けた。会談が長引いたのは2人の相性が明らかに良かったのが理由だ」という。
プーチン氏は「(今回の)首脳会談のように私と彼が信頼関係を構築していけば、ある程度、協力関係を復活できると思う」と米露関係修復へ楽観的な見通しを明らかにした。だがロシアによる米大統領選介入疑惑という大きな火種を抱えている他、ウクライナ危機やシリア問題をめぐっても両国の立場は異なる。こうした懸案の解決に向け、協力できるのか疑問だ。
中東情勢に関して、トランプ政権はサウジアラビアを中心にイスラム教スンニ派のアラブ諸国と協力関係を強化しようとしているが、ロシアはそのサウジと対立するイランと協力し、アサド政権を支えている。米国はアサド政権を支持する考えはなく、今後もシリア問題で米露対立が続くことが予想される。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を行った北朝鮮の核・ミサイル開発への対応でも、圧力強化を求める米国と対話解決を主張するロシアの立場は大きく隔たる。
プーチン氏は中国の習近平国家主席との首脳会談で、北朝鮮に核・ミサイル開発の停止を求めると同時に米韓が軍事演習を中止する必要があるとの認識で一致した。北朝鮮への圧力を強める日米韓を牽制(けんせい)した形だ。
米は日韓との連携強化を
ロシアは今年5月、ウラジオストクと北朝鮮の羅先経済特区の間に貨客船「万景峰号」の定期航路を新設。北朝鮮に対する制裁措置の抜け穴となることが懸念されている。
北朝鮮問題をめぐって、トランプ氏はプーチン政権の出方をにらみながら日韓両国との連携を強化する必要がある。