みちびき2号、独自の測位システム構築急げ
日本版GPS(全地球測位システム)の実現を目指している政府の準天頂衛星「みちびき」2号の打ち上げが成功した。GPSによる誤差を縮小するほか、国土地理院の電子基準点と連携して数㌢単位の精密測位も実現する。
年内にさらに2基打ち上げ4基体制とし、2023年度中には、みちびきだけで常時測位が可能な7基体制をつくる。安全保障を含む、さらなる安心安全の確保へ独自測位システムの構築を急ぎたい。
年内にさらに2基投入
GPSを利用した位置情報はカーナビやスマートフォンなどに使われ、今や生活に欠かせない。しかし、高層ビルなどに遮られたり、精度が落ちたりすることも多い。
GPSはもともと米国の軍事用システムで、米国での活用を想定して開発されているためだが、みちびきはGPSの誤差を1㍍程度に縮小する。さらに国土地理院が全国に設置する電子基準点との連携で、数㌢~数十㌢単位の精密測位ができるようになる。
みちびきはGPSと異なり、日本のほぼ真上(準天頂)にいる時間が長い軌道を飛行するため、ビルの谷間など電波の届きにくい「死角」を減らせるからだ。だが、1基が日本上空をカバーするのは約8時間。24時間運用には最低でも3基が必要となる。
このため、みちびきを所管する内閣府は、年内にさらに2基(うち1基は静止軌道に投入)を打ち上げて4基体制を構築し、来年4月から測位データの提供を開始する予定である。
内閣府などは土木建築や測量、農業など幅広い分野で2兆円以上の市場を創出できるとみている。産業界も無人自動運転などに必要な位置情報の精度向上につながるとして高い期待を寄せている。自動運転車や小型無人機ドローン、無人農機などの開発が加速しそうである。
10年に打ち上げた1号機を利用した実証実験には、地方のベンチャー企業なども参加した。歩行者向けシステムの実験を行った企業は、視覚障害者が介助者なしで外出するための支援機器開発に着手。IT関連企業ではオートバイや「セグウェイ」のような立ち乗り式電動二輪車など、個人向け移動手段との組み合わせによる利用可能性を模索する。
測位情報が役に立つのは民間ばかりではない。安全保障上の理由から、米国やロシア、中国などの宇宙開発大国は独自の測位システムをすでに構築しているか、構築を目指している。米国のGPSは約30基、ロシアの「グロナス」は24基を維持。欧州の「ガリレオ」や中国の「北斗」も30基前後の整備を進めている。
7基体制で安全確保を
日本は23年度中には7基体制を構築し、GPSが使用できない場合でも、みちびきだけで常時測位ができる体制をつくる計画である。
だが北朝鮮や中国の動向などで東アジア情勢が緊迫化する中、国民の一段の安心安全を図るには、できるだけ早期の構築が望ましい。関係各所の一層の努力を望みたい。