高安大関昇進、世代交代の先頭に立つ闘いを


 大相撲夏場所で活躍した高安(田子ノ浦部屋)が大関に昇進した。平成生まれでは2015年夏場所後に誕生したモンゴル出身の照ノ富士以来2人目で、日本出身では初めてとなる。世代交代の先頭に立つ闘いを期待したい。

 直近の3場所で34勝

 高安は、大関昇進に初めて挑んだ昨年九州場所は負け越したものの、小結で臨んだ今年初場所で白鵬、鶴竜の両横綱らを倒して11勝。春場所は関脇で12勝とした。再び大関昇進の懸かった夏場所では、優勝争いをしていた横綱日馬富士を破って11勝。三役での直近3場所で、大関昇進の目安とされる33勝を上回る34勝を挙げた。

 昇進伝達式では「謹んでお受けいたします。大関の名に恥じぬよう正々堂々精進します」と口上を述べた。さらに練習を重ね、今度は平成生まれ初の横綱昇進を実現してほしい。

 入門から12年かけて大関に昇進した高安だが、かつては相撲が嫌で仕方がなかったという。亡き先代師匠(元横綱隆の里)に説き伏せられて入門した後も脱走を7回繰り返した。だが06年に父栄二さんに腎臓がんが見つかったことがきっかけで、猛稽古に打ち込むようになった。

 厳しかった先代師匠からは、叱られたことよりもかわいがられたことの方を覚えているという。「素直でいること。大成する人はどんな人でも素直な心を持っているよ」と言われたことが心に残っている。

 同じ茨城県出身で兄弟子の横綱稀勢の里の存在も大きかったに違いない。高安は稀勢の里について「たくさん稽古をつけてもらった。今の自分があるのも横綱のおかげ」「稀勢の里関も横綱に上がったので、自分もという気持ちになった」と述べた。

 普段は勝っても負けても感情をあまり表に出さない高安だが、春場所で左肩付近を負傷した稀勢の里が逆転優勝を果たした時は号泣した。稀勢の里も高安の昇進伝達式で「こんなにうれしいことはない。彼らしい口上だと思う」と自分のことのように喜んだ。普段の猛稽古とともに、こうした家族や師匠、兄弟子との絆が高安を大関の地位に押し上げたのだろう。

 もちろん、立ち合いの高さや引き技に頼る癖など改善すべき点もある。夏場所では、13日目に日馬富士に勝って大関昇進を確実にした後に2連敗した。精神面でもさらなる成長が求められよう。

 高安の大関昇進で、7月の名古屋場所は00年春場所以来の4横綱3大関となる。夏場所では白鵬が38回目の優勝を飾った一方、若手の台頭も著しい。相撲ファンとしては目が離せない場所となりそうだ。

 国技にふさわしい人格を

 かつて相撲界は、時津風部屋の力士傷害致死事件、大麻、野球賭博、八百長などの問題が続発し、11年春場所は中止に追い込まれた。このような状況で、白鵬が孤軍奮闘していた姿が思い出される。

 力士に求められるのは強さだけではない。伝統ある国技の継承者にふさわしい人格を備えることが必要だ。大相撲人気が回復した今だからこそ、こうした原点に立ち返ってほしい。