G7サミット、米国は「反保護主義」尊重を


 イタリア南部シチリア島タオルミナで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)は首脳宣言を採択して閉幕した。

 焦点となっていた貿易の在り方については「開かれた市場を堅持し、保護主義と闘う」と首脳宣言に明記した。

 トランプ氏がドイツ批判

 自由貿易の推進と反保護主義は、G7が共有する価値観の一つだ。しかし「米国第一」を掲げ、貿易赤字の削減を目指すトランプ米政権は「公正で自由な貿易でなければ、保護主義的な措置を取る権利がある」(ムニューシン財務長官)などと主張。首脳宣言に反保護主義を盛り込むことに否定的な見解を示してきた。

 サミットに先立って、トランプ大統領は欧州連合(EU)幹部との会談で「とてもひどい。ドイツが米国で売っている何百万台もの自動車を見てみろ」と述べ、巨額の対米貿易黒字を持つドイツを批判。サミットでは「もし相手が30%の関税をかけるなら、われわれも30%の関税をかける」と説明した。

 米国では人口が増えて消費が旺盛なため、自国で需要をまかなえず、海外からの輸入が多いことで貿易赤字が生じている。その意味では、必ずしも米国経済にマイナスとは言えまい。

 ドイツは米国に巨額の直接投資をすることで雇用を生んでいる。これは日本も同様だ。ドイツのメルケル首相は「(貿易赤字という)片方だけ見るべきではない」と反論した。トランプ氏は反保護主義の理念を尊重すべきだ。

 首脳宣言の文言に関しては、安倍晋三首相がトランプ氏を粘り強く説得。トランプ氏は「不公正な貿易慣行に断固として立ち向かう」との文言を盛り込むことと引き換えにようやく受け入れた。火種は残るものの、米欧の「橋渡し役」を担い、決裂を回避した首相の外交努力は高く評価されよう。

 しかし気候変動分野では、米国との溝は埋まらなかった。トランプ氏は地球温暖化対策について「米国にとって不公平だ」と疑問視しており、国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱も視野に入れる。

 首脳宣言は「米国がパリ協定の見直しを進めていることに理解を示す」としたが、世界第2位の温室効果ガス排出国である米国が抜ければ、協定は有名無実となりかねない。安倍首相や欧州首脳は、再生可能エネルギーの普及などが雇用創出につながることをトランプ氏に繰り返し説明して理解を得るべきだ。

 一方、首脳宣言では、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の問題を「最優先事項」とし、世界の平和と安定にとって「新たな段階の脅威だ」と警告。また、中国の強引な海洋進出を念頭に「緊張を増大させるいかなる一方的な行動にも強く反対する」と明記した。

 対中朝で結束の意義大

 サミット直前の日米首脳会談では、北朝鮮に対し、連携して圧力を強める方針を確認。さらに、安倍首相は南シナ海で米海軍が行った「航行の自由作戦」に支持を表明した。サミットで日米両首脳が北朝鮮や中国の問題について議論を主導し、G7が結束した意義は大きい。