米艦防護、新段階の同盟誇示の意義大


 安全保障関連法に基づき、海上自衛隊が平時に米軍艦船などを守る新任務「武器等防護」を初めて実施した。護衛艦「いずも」「さざなみ」が米海軍の補給艦を防護した。

 自衛隊が米軍を守る新任務に就いたことは、日米同盟が新たな段階に入ったことを意味するものだ。

 安保法に基づく任務

 今回の米艦防護は、米軍の要請を受け、稲田朋美防衛相が命じていた。昨年3月の安保関連法施行後初めてとなる。いずもは横須賀基地(神奈川県)を出港し、房総半島沖から四国沖の太平洋まで共同訓練しながら補給艦を防護。呉基地(広島県)を出たさざなみは途中で合流した。任務を終えたいずもとさざなみは、シンガポールでの国際観艦式に参加する予定だ。

 米艦防護の最大の意義は、日米安保体制の一層の強化を内外に誇示したことだ。北朝鮮に新たな核実験や弾道ミサイル発射などの挑発行為を思いとどまらせる狙いもある。

 米艦などを自衛隊が守る「アセット(装備品など)の防護」は、2015年4月に改定された日米防衛協力の指針(ガイドライン)に盛り込まれた。この内容を法律として具体化したのが自衛隊法に新設された「米軍等の武器等防護」で、米艦防護はこれに基づいて行われた。日本の防衛のために活動する米軍などの艦船や航空機を対象に実施できる。

 この任務の際、自衛官は攻撃に対して反撃する「正当防衛」と急な攻撃を避ける「緊急避難」の場合にのみ武器を使えることになっている。不審な艦船や航空機が米軍に近づいてきた場合、撃沈に至らぬまでも、動きを止めるために自衛隊が武器を使えることを示すことで、一定の抑止効果が期待できる。

 北朝鮮による弾道ミサイル発射への警戒や中国海軍の動向監視のため、米艦は日本の近海に常時展開している。従来、自衛隊に近くを航行する米艦を守ってほしいという米軍の要請は極めて強く、今回日本が要請に応えたことは評価できる。

 日米安保条約に基づき、米軍は日本に基地を置いて日本防衛の義務を負う。一方、日本は米軍に守ってもらうだけで、米本土防衛の義務はない。

 安倍晋三首相は15年8月の国会審議で「米艦防護を日本がせず、米艦が撃沈され、多くの若い米兵が戦死したら、その瞬間に日米同盟の絆は決定的な打撃を被る」と強調し、日本が米艦防護に踏み出す必要性を訴えていた。首相は「積極的平和主義」を掲げ、集団的自衛権行使の限定容認を柱とする安保関連法を制定するなど自衛隊の役割拡大に力を注いできた。

 政府関係者によると、今回の米艦防護をめぐっては今年の春先から海自と米海軍で具体的な調整を始めた。北朝鮮情勢が緊迫する今こそ、自衛隊が米艦を防護することで日米の連携を内外に誇示する絶好の機会だと言える。

 共同訓練で実績重ねよ

 北朝鮮への牽制(けんせい)を強めるためにも、今後は韓半島に面した日本海で米艦防護を実施することも考えるべきだ。共同訓練を重ねて実績を積み上げてほしい。