高浜運転容認、司法は専門的知見を尊重せよ


 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定について、大阪高裁(山下郁夫裁判長)が関電の保全抗告を認め、差し止めを取り消す決定をした。妥当な判断だ。

差し止め取り消した高裁

 高浜原発から30~70㌔圏内に住む滋賀県の住民29人は2015年1月、大津地裁に運転差し止めの仮処分を申請。大津地裁は昨年3月、「安全性の確保について関電は説明を尽くしていない」として運転禁止を命じた。7月には同じ裁判長が関電の異議を退けていた。

 山下裁判長は決定で、原発の安全性審査について「専門性、独立性が確保された原子力規制委員会の判断に委ねられている」と指摘。その上で、関電が新規制基準への適合に関して「相当の根拠と資料に基づいて説明した」と判断した。

 最高裁は1992年、伊方原発訴訟の判決で、原発の安全審査は、科学的、専門的な知見に基づく行政の合理的判断に委ねるとしている。今回の決定は、この最高裁判決に沿ったもので妥当だと言える。

 高浜3、4号機をめぐっては、福井地裁が2015年4月、再稼働を差し止める仮処分決定を出した。同地裁の別の裁判長は同年12月、関電の異議を認めて仮処分を取り消し、3、4号機は昨年1~2月に再稼働したが、大津地裁の決定を受け停止している。運転中の原発を止める仮処分決定は初めてだった。

 大津地裁は決定で、新規制基準の過酷事故対策について「関電の主張や証明の程度では、新規制基準や(規制委が審査で与えた)設置変更許可が、直ちに公共の安寧の基礎になると考えることをためらわざるを得ない」とした。だが、新規制基準は世界で最も厳しいレベルとされている。

 大津地裁は何を基準に運転禁止を命じたのだろうか。原発の安全性に関する判断は高度な専門性が求められ、司法が規制委の審査結果と異なる決定を下すことには大きな疑問が残る。

 原発は東京電力福島第1原発事故後、一時稼働ゼロとなったが、政府は「重要なベースロード電源」と位置付け、規制委の審査に合格したものから順次再稼働させている。

 政府は原発の電源比率を30年度に20~22%に引き上げる方針だ。来年度のエネルギー基本計画見直しでは、実現に向けて原発増設や建て替えを打ち出すかが焦点となる。しかし司法判断で原発が止まるようでは、エネルギー政策に支障が生じる。

 現在は、すでに再稼働している四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)や、安全性審査に合格した九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)などに対して運転差し止めの仮処分が申し立てられている。裁判所には専門的知見に基づく行政判断を尊重するよう求めたい。

理解得る取り組み強化を

 もっとも福島の事故後、原発に対する国民の不安が大きいのは事実だ。政府は新規制基準による安全性向上について丁寧に説明し、原発の再稼働はもちろん、将来的には増設に対する理解も得られるよう取り組みを強化する必要がある。