拉致家族会20年、一日も早い全被害者救出を


 北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)が結成されてから20年が経過した。被害者家族の高齢化が進む中、一日も早く全被害者を救出することが求められる。

 高齢化で時間との闘い

 家族会は、1997年に横田めぐみさん=77年新潟市で失踪、当時(13)=が拉致されたとの証言が報じられたことなどをきっかけに、被害者家族が97年3月25日に結成。全国で署名活動などを行って被害者救出を訴え続けてきた。

 拉致は北朝鮮による国家犯罪だ。家族会などは結成20年に当たり声明で、北朝鮮が拉致を認めて被害者5人が帰国した2002年以降、1人も帰国していないことを踏まえ「この悔しさと無念さは言葉にならない」と強い怒りを表明した。

 めぐみさんが拉致されてから今年で40年となる。この間、北朝鮮は拉致問題をめぐって極めて不誠実な対応に終始した。めぐみさんの偽の「遺骨」を提出してきたこともある。

 14年5月のストックホルム合意では日本人拉致被害者の再調査を約束したが、調査報告を先送りし続けた上、核実験や長距離弾道ミサイル発射に対して日本政府が独自の制裁措置を決定したことに反発。16年2月に再調査の中止を発表した。被害者家族の気持ちをもてあそぶような北朝鮮の態度は非道極まりないもので許し難い。

 家族会代表の飯塚繁雄さん(78)=田口八重子さん(拉致当時22)の兄=は、本紙のインタビューで「日本国民が拉致されたのになぜ日本の政府や国会議員は動いてくれないのか。これまで政権が何度も代わり、総理大臣がいくたびも交代したが、皆やっていますという話ばかりで実質的な動きが見られない」と述べている。

 安倍晋三首相は拉致問題を最重要課題としている。飯塚さんの言葉を重く受け止め、何としても全被害者の帰国を実現しなければならない。

 この20年で被害者家族の高齢化が進み、集会などへの参加も難しくなっている。かつて国民大集会などでは、めぐみさんの父滋さん(84)と母早紀江さん(81)の姿が必ずと言っていいほど見られたが、滋さんは結成20年を前に行われた記者会見を体調を考慮して欠席した。

 現在、家族会で帰国できていない被害者のうち、両親が健在なのはめぐみさんと有本恵子さん=1983年欧州で失踪、当時(23)の2家族だけだ。失踪当時、中学1年生だっためぐみさんは52歳、英国留学中だった恵子さんは57歳になった。

 時間との闘いの中、家族会と支援団体「救う会」は「今年中に救出せよ」と期限を区切った運動方針を決定した。もはや一刻の猶予も許されない状況だ。

 あらゆる策を講じよ

 政府は金正男氏殺害事件などを踏まえ、米国に北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう働き掛けていく方針だ。2008年に核問題で一定の前進があったとして当時のブッシュ政権が解除したが、日本は拉致問題が置き去りにされることを懸念し、解除に反対した経緯がある。全被害者救出のため、あらゆる策を講じるべきだ。