PKO5原則、一層の国際貢献へ見直しを


 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊が首都ジュバの状況について昨年7月の日報に「戦闘」と記載していた。

 野党の批判に対し、稲田朋美防衛相は「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為とは評価できない」として、停戦合意が崩れた場合の撤収を定めたPKO参加5原則には抵触しないとの見解を示した。

日報に「戦闘」と記載

 この日報は従来、防衛省が「廃棄した」と説明していた。しかし、複数の開示請求や国会議員からの指摘で再度調査したところ、電子データとして残っていたことが分かった。防衛省は文書管理の体制を見直し、再発防止に努めなければならない。

 南スーダンPKOは、南スーダンが内戦を経て2011年7月にスーダンから独立したことを受け、治安確保や国造りを支援するために派遣されている。日本政府は11年11月に陸上自衛隊の派遣を決定した。

 首都ジュバでは昨年7月、キール大統領を支持する政府軍とマシャール副大統領(当時)が率いる勢力との間で大規模な戦闘が発生した。この状況について、今回残っていた日報に「戦闘」と記載されたことが問題となっている。

 戦闘行為があった場合、停戦合意が守られていることなどを派遣の条件とするPKO参加5原則に抵触するためだ。野党は日報を「明らかに隠していた」と批判している。

 これに対し、稲田防衛相は衆院予算委員会で「一般的な辞書的な意味で戦闘という言葉を使ったと推測している。法的な意味の戦闘行為ではない。武力衝突だ」と答弁した。

 政府は、戦闘行為を「国家または国家に準ずる組織(国準)間の紛争の一環として行われる人を殺傷し、または物を破壊する行為」と定義。マシャール氏の勢力を「支配系統や領域を有している勢力ではない」として、国準に当たらないと判断している。稲田氏の答弁は、現地の情勢を反映した妥当なものだと言える。

 南スーダンPKOに派遣された陸自は昨年12月、安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」の新任務実施が可能になった。正当防衛だけでなく、任務を妨害する暴徒排除などのために銃による威嚇や警告射撃を行う。他国軍との宿営地の共同防護もできるようになった。

 一方、今回論議の的となったPKO参加5原則は、国際社会では通用しないものだ。PKO部隊は無政府状態の国家に派遣されるケースもあるが、参加5原則がある限り、自衛隊はこうした国家で活動できない。

 PKO派遣部隊の行動は集団安全保障の一環であり、戦時国際法やPKOマニュアルに基づかなければならない。危険な任務だからこそ、戦闘能力のある武装部隊が派遣されるのだ。

不毛な論議繰り返すな

 安倍政権は「積極的平和主義」を掲げ、世界の平和と繁栄のために貢献するとしている。

 それならば、これ以上PKOをめぐって不毛な国会論議を繰り返すべきではない。早急に参加5原則の見直しに踏み出す必要がある。