オスプレイ事故、再発防止徹底と丁寧な説明を
在日米軍は、沖縄県名護市沖での不時着事故後停止していた新型輸送機オスプレイの飛行を全面再開させた。
事故の再発防止徹底とともに不安を抱く県民への丁寧な説明が求められる。
浅瀬に不時着して大破
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の海兵隊のMV22オスプレイ1機が、名護市沖の浅瀬に不時着して大破した事故では、乗員5人のうち2人が米海軍病院に搬送された。日本国内でのオスプレイの重大事故は初めてだ。
事故後、ケネディ駐日米大使は岸田文雄外相との電話会談で、オスプレイの飛行を一時停止する方針を伝えた。在日米軍は事故原因について、夜間の空中給油訓練中、乱気流などによって事故機のプロペラが給油機のホースと接触して損傷したためとし、「機械系統や機体の構造に問題はない」と日本側に説明している。
ただ、事故からわずか6日後に飛行を再開したことに、沖縄県内では強い反発が出ている。在沖縄米軍トップのニコルソン四軍調整官は「パイロットの練度を維持し、必要な時に同盟国を支援できるよう訓練の機会を確実に持つことが大切だ」とする声明を発表した。
このような事情は理解できるが、説明不足は否めない。事故機とは別のオスプレイが普天間飛行場に胴体着陸したことも明らかになっている。在日米軍は再発防止策を徹底し、オスプレイの安全性について丁寧に発信する必要がある。
オスプレイをめぐっては開発段階で墜落事故が相次ぎ、普天間飛行場に配備される際にも抗議活動が展開された。だが、10万飛行時間当たりの事故率は海兵隊全体の平均値と同じだ。ヘリコプターと固定翼機の特徴を兼ね備えており、垂直離着陸や空中停止、高速での長距離移動ができる。
4月の熊本地震では被災地に救援物資を輸送するなど活躍した。オスプレイ配備は在日米軍の抑止力向上にもつながる。
今回の事故をめぐって気になったのは、ニコルソン氏が沖縄県の安慶田光男副知事の抗議を受けた際に「県民や住宅に被害を与えなかったので、感謝されるべきだ」と述べたことだ。在日米軍が安全を最優先して対応していることを強調したかったのかもしれない。
だが、そもそも事故はあってはならないことだ。実際に被害がなかったとはいえ、事故を起こした側の在日米軍が沖縄県民に感謝を要求するようなことは許されない。
それでなくても、沖縄における反基地感情は強い。オスプレイ、さらに在日米軍への不安や不信が高まれば、日米同盟関係にも悪影響を及ぼしかねない。在日米軍には慎重な言動が求められる。
配備撤回要求は行き過ぎ
オスプレイの飛行再開に対して、沖縄県の翁長雄志知事は「到底容認できない」と表明し、日米両政府に飛行の即時中止と配備撤回を求めた。
だが、沖縄は韓半島や中国に近い。こうした地政学上の重要性を踏まえれば、オスプレイ配備撤回の要求は行き過ぎだ。