地域包括ケア、家族の「互助」が前提である


 超高齢社会を迎え、地域ケアにどう臨むか、医療や介護の在り方が問われている。いずれの面でも「地域が主体」となる時代を迎えており、地域の「互助」が重要視されている。だが、その前提となる家族の「互助」が見落とされていないか、改めて考えてみたい。

 自助、共助、公助に穴

 65歳以上の高齢者人口が今年9月、前年より73万人増えて3461万人となり、総人口に占める割合が27・3%に上った。団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には国民の3人に1人が高齢者となり、5人に1人が後期高齢者となる見通しだ。

 それを見据え、官民挙げて「地域包括ケアシステム」に取り組んでいる。高齢者が住み慣れた街で、元気に自分らしい暮らしを人生の最後まで続けてもらうため、医療、介護、予防、生活支援を一体的に捉え、包括的なサービス提供体制を構築するのが狙いだ。

 医療面では今年4月の診療報酬の改定で「かかりつけ医」機能の充実が図られ、「治す医療」から「支える医療」への転換を目指す。介護面では来年4月から「要支援」向け事業が市町村に本格移行する。

 そうした中で「互助」が注目されている。福祉の基本は従来、自助(自らなす)、共助(保険制度)、公助(生活保護)の3本のセーフティーネットで論じられてきた。だが、独居高齢者の増加などで自助が十分に機能せず、それを共助で賄うにも資金が足りず、生活保護受給者は今年8月の時点で214万6000人余に上っている。ネットに穴が開き、それをどう埋めるかが大きな課題だ。

 そこから互助に期待が集まる。例えば、日常生活圏(中学校区)には地域包括支援センターが置かれ、地域ケア会議が催されている。そこでは民生委員や町内会長、介護を担うケアマネジャー、薬局、郵便局、信用金庫、コンビニ、NPO団体、警察の防犯係など地域に関わる多職種が連携し合い、互助力の向上に努めている。

 地域の互助の前提となるのは「家族」だ。独居高齢者が医療面で手術などの同意が必要な場合、遠く離れていても家族の協力が欠かせない。金銭的にも直接的に関われるのは家族だ。家族の協力なしでは地域互助も画餅に帰す。そんな問題に直面した民生委員も少なくない。

 民主党政権時代に当時の菅直人首相は「孤立化という新たな社会リスク」を取り上げ、「寄り添い・伴走型支援」社会の実現を提唱した(10年6月)。寄り添い、伴走するのは本来、家族の役割で、それこそが「家族互助」の意味だろう。

 ところが、国会で始まった憲法論議で、自民党の改憲草案にある「家族は、互いに助け合わなければならない」が批判の的となっている。そうした批判だけで社会リスクの克服が果たせるのか、大いに疑問だ。

 真摯に有り様を考えよ

 家族互助を政争の具とせず、真摯にその有り様を考えるべき時ではないか。地域包括ケアで期待される地域互助を推し進めるには、家族互助が必須だと改めて確認しておきたい。