憲法審査会再開、建設的な議論で合意点探れ


 憲法審査会が衆参両院で再開された。7月の参院選で、憲法改正に前向きな勢力が衆参両院で発議に必要な3分の2以上の議席を占めて以降、初の開催となった。公布されて70年を迎え、内外情勢も変化する中、現憲法に限界があることは明らかだ。各党は党利党略を超えて、発議に向け議論を深め、合意点を見いだすべきだ。

 後ろ向きな姿勢の民進

 憲法改正の原案などを審議することを目的として、2007年に成立した国民投票法によって設置が定められた憲法審査会だが、これまで政局に振り回される形で議論は停滞してきた。

 衆院憲法審査会は昨年5月、改憲項目の絞り込みに向けた実質討議を開始したが、同年6月の参考人質疑で、安全保障関連法をめぐり与党推薦の憲法学者を含む参考人が「憲法違反」と指摘。これをきっかけに、民進党が与党との対決姿勢を強める中、休眠状態となった。今回、1年5カ月ぶりに再開されたことはひとまず歓迎すべきだ。

 自民党の中谷元氏は「憲法改正の必要性と内容について熟議を重ね、国民の合意形成を目指す」と述べ、議論のテーマとして、環境権、知的財産権、統治機構改革、緊急事態条項、参院選挙区の合区解消、自衛隊の憲法上の位置付けなどを示した。

 今のところ、「改憲勢力」とされる自民、公明、維新など各党の間にも優先する改憲項目の違いや温度差も見られるが、真摯(しんし)に丁寧な議論を積み重ねる中で、合意形成を図るべきだ。

 一方、民進党などが撤回を求めていた改憲草案について、自民党は「そのまま審査会に提案するつもりはない」とこだわらない姿勢を示すなど、合意形成に向け歩み寄りを見せた。だが、民進党は「自民党改憲草案に危惧を覚えざるを得ない」(衆院憲法審、武正公一氏)、「安保法制を放置して改憲論議を行うことは絶対に許されない」(参院憲法審、白真勲氏)と述べるなど、後ろ向きな姿勢が目立った。

 同様の主張を展開する共産、社民と歩調を合わせるかのようであり、次期総選挙での「共闘」を意識した党略もにじむ。

 また、党内に保守系とリベラル系を抱える同党が、党内対立の表面化を避けるために、政権批判を強めることで改憲論議を先送りし続けるとすれば、政権担当能力を持つ政党として国民の信頼を取り戻すことは難しい。今後は「護憲」に固執する共産、社民と一線を画し、建設的な姿勢で議論に臨み、改憲への具体的な提案を示すべきだ。

 特に近年、中国が海洋進出を強め、北朝鮮が核・ミサイル開発を進める一方、米大統領選で在日米軍の撤退の可能性に言及したトランプ氏が次期大統領に選ばれたように、米国も内向きの傾向が見られる。時代の変化に合わせて改憲案を示すのが、改憲を発議できる唯一の機関である国会の責任である。

 改正の必要性啓発を

 今国会では24日にも衆院憲法審が開催される。しかし、各党間の合意形成を促進するには、もっと頻繁に開催し、議論を加速させる必要があるだろう。審査会で議論を重ねつつ、改憲の必要性を啓発し、国民的議論を巻き起こすことが大切だ。