衆院補選、野党共闘で惨敗した民進党


 7月の参院選後、初の国政選挙となった衆院東京10区と福岡6区の補欠選挙で、自民党が議席を守った。

 「解散風」が吹く次期衆院選の前哨戦として注目されたが、政策論争は低調で、与野党ともに課題を残した。とりわけ惨敗した民進党は猛省すべきだ。

 効果はほとんど見られず

 東京10区は小池百合子東京都知事が衆院議員を辞して知事選に出馬したことに伴うもので、知事選での「小池ブーム」の延長線上の自民党候補勝利だ。これをもって次期衆院選のバロメーターとすることはできない。

 また福岡6区は同党の鳩山邦夫氏の死去に伴うもので、後継候補をめぐって自民党が分裂、当選者を追加公認する苦肉の策を取った。本来、小選挙区は政党間で政策を競う制度だが、同一政党候補者が争う中選挙区時代の派閥選挙の様相を呈した。

 いずれの補選でも自民党候補に「個人」は見えても「政党」の姿は希薄だった。自民党に気掛かりなのは、政策を国民に訴える姿勢が足りないことだ。安倍政権の高支持率に甘え、国民が無条件に支持してくれていると錯覚してはなるまい。

 例えば、環太平洋連携協定(TPP)の国会審議をめぐる山本有二農林水産相の「強行採決」発言だ。国会審議は、なぜ安倍政権がTPPの承認を求めるのか、その必要性を国民に訴える絶好の機会だ。農水相発言はそれを怠り、「数の論理」で押し通そうとする印象を与えた。これでは国民の不信を買う。

 憲法論議もそうだ。憲法改正は自民党の党是であり、安倍政権の悲願のはずだ。その実現には国民一人一人を説得する地道な啓蒙(けいもう)が必要だが、国民世論を喚起する働き掛けが弱い。補選でも棚上げにした。

 一方、民進党はさらに深刻な問題を露呈させた。蓮舫氏が党代表となって初めての国政選挙だったが、政策そのものが不透明で、政権交代可能な政党像を有権者についぞ示せなかった。

 共産党が独自候補を降ろし「民共共闘」が成立したことで、民進党候補は事実上の野党統一候補となった。補選とは言え、政権を問う衆院選だ。国政の根幹たる外交・安全保障政策を曖昧にし、政策協定も結ばず、反自民・反安倍の“一点共闘”は理解し難い。これこそ票の上積みだけを狙う「数の論理」で、野合としか言いようがない。

 補選でも共闘効果はほとんど見られなかった。それどころか、福岡6区では自民党系の2候補の争いに埋没し、当落にも絡めない惨敗を喫した。

 民進党は先の新潟県知事選で「自主投票」としながら、終盤戦に共産党や社民党などの推薦候補の優勢が伝えられると、「勝ち馬」に乗るかのように蓮舫氏が現地入りし応援した。これには支持母体の連合が反発し、不信感を露(あら)わにしている。

 政権担える政策作りを

 共産党は次期衆院選の野党共闘で反原発を共通政策に盛り込もうとしているが、共産党との安易な合意は民進党への不信を深めるだけだ。票を得るための「数の論理」でなく、政権を担える政策作りにこそ力を注ぐ必要がある。それが今回の補選の最大の教訓と知るべきだ。