代替フロン、温暖化防止へ削減進めよ
アフリカ・ルワンダの首都キガリで開かれた「モントリオール議定書」の締約国会議は、エアコンなどの冷媒に使われ、温室効果が極めて高い「代替フロン」の生産を規制する議定書改定案を採択した。地球温暖化防止に向け、着実に削減を進めるべきだ。
非常に大きい規制効果
モントリオール議定書は1987年、有害な紫外線を吸収するオゾン層を保護するために採択された。オゾン層を破壊する特定フロンなどの生産を規制する国際合意だ。
これを受け、オゾン層への影響のない物質として代替フロンの普及が進んだ。だが後に、代替フロンに二酸化炭素(CO2)の数百~数千倍の温室効果があることが判明した。
温暖化防止の観点から、ミクロネシアやモーリシャスなどの島嶼(とうしょ)国が2009年、規制のための議定書改定を提案。規制の推進は、今年5月に富山市で開かれた先進7カ国(G7)環境相会合の共同声明にも盛り込まれた。
約200カ国の代表が参加した締約国会議では、先進国と途上国が激しく対立したが、途上国・新興国の規制の開始時期を先進国より遅らせることで合意にこぎつけた。温室効果ガス削減に向けた「パリ協定」の来月発効が決定し、国際的に温暖化防止の機運が高まっていたことが、対立の克服を後押ししたとも言えよう。
これによって、日本を含む先進国は19年から段階的に削減を始め、36年までに基準となる11~13年平均に比べて生産量を85%減らす。一方、途上国・新興国は20~26年を基準年とし、45~47年に80~85%を削減。中国などは24年、インドや産油国は28年から、それぞれ削減を開始する。
パリ協定では、世界の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べて2度未満に抑える目標を掲げている。代替フロン規制は世界の気温上昇を0・5度抑える効果があるとされ、議定書改定の意義は極めて大きい。パリ協定の目標達成に向け、各国は今回の合意に沿って着実に削減を進めるべきだ。
日本は批准後の新法制定などを視野に入れ、対応を急ぐ必要がある。ただ昨年4月にフロン製造輸入業者に出荷量の段階的な削減を求める「フロン排出抑制法」が施行され、企業などでは生産規制を先取りした取り組みが既に始まっている。このため、家電製品価格などへの影響はないとみられる。
代替フロンは国内企業の大型冷凍・冷蔵設備で多く使われている。環境省は14年度から、アンモニアなどを用いた自然冷媒の設備に切り替えるよう促す補助金事業を行っている。こうした取り組みをさらに広げていきたい。
日本は一層の対策強化を
パリ協定は来月4日に発効予定で、温室ガス二大排出国の米国と中国を含む70カ国超が批准している。
政府は協定承認案を国会に提出したが、各国に大きく出遅れたことで日本の存在感が低下しかねない。原発再稼働推進をはじめ温暖化対策の一層の強化が求められる。