大規模停電、不測の事態への備え万全に


 東京都内の約58万6000戸に影響が出た大規模停電は、埼玉県新座市の東京電力施設内のケーブル火災が原因だった。ケーブルの経年劣化が火災につながったとみられている。

ケーブル劣化で漏電か

 停電の影響で、都内では鉄道などの交通網が乱れ、約200カ所の信号機も停止した。練馬区では電線が約100㍍燃えた所もある。このほか、エレベーターの閉じ込めが相次ぐなど混乱が続いた。

 送電網トラブルによる大規模停電は過去にもあった。1999年11月、航空自衛隊機の墜落で高圧線が切断され、都内や埼玉県内の約80万世帯が停電。2006年8月には、旧江戸川でクレーン船が送電線に接触し、約139万戸が停電して完全復旧に4時間40分かかった。

 東電は今回、新座変電所からの送電が途絶えた地域に送る電気を別の変電所を経由して供給した。完全復旧までは約1時間だった。時間短縮は、過去の教訓を生かした結果だろう。

 だが、大規模停電は生命の危険に関わる事態を引き起こす恐れがある。東電は今回の原因を徹底究明し、再発防止に全力を挙げる必要がある。

 火災が起きた施設は都内の変電所に送電するケーブルが入った地下トンネル。ケーブルは地下約6・2㍍の地点にあり、計18本が3本ずつ六つの束になった状態で通っている。

 このケーブルは電気が通る銅製の導体(電線)の内側に、絶縁のための油が流れるパイプがある。外側にはパイプから染み出た油を含む絶縁紙が巻かれ、漏電を防ぐ構造になっているが、引火すると激しく燃えることが懸念されていた。

 今回発火したケーブルは敷設されてから約35年が経過し、これまでに交換された記録はないという。東電管内の地下にある同じタイプのケーブルのうち約1000㌔は35年以上が経過しているという。

 業者によれば、高圧送電ケーブルの耐用年数の目安は20~30年だ。異常がなければ使い続けるケースが多いようだが、目安を過ぎれば不具合が起きる可能性は高まろう。ケーブルの劣化による漏電が火災の原因とみていい。

 東電では10年以上前から、同タイプのケーブルに延焼を防ぐ防火シートを巻き付ける作業を進めていた。今回燃えたケーブルも2021年までに防火シートで覆う計画だったという。現時点で覆われていれば、停電がこれほど大きな規模にはならなかっただろう。防火シートの作業ペースを上げるべきだ。

 ケーブルの点検は年に1回、目視で行われていた。今年6月の点検では異常は確認できなかったというが、今後は検査体制の強化も求められよう。

官庁や病院は対策強化を

 もっとも停電が起きるのは、ケーブル火災に限らない。30年以内に70%の確率で起きるとされる首都直下型地震などの自然災害でも、大規模停電の発生が予測されている。

 今回も中央官庁が停電に見舞われた。特に官庁や、患者の生命を預かる病院などは停電対策を強化し、不測の事態への備えを万全にしなければならない。